新型コロナウイルスのまん延とさらなる感染拡大を防ぐため、家から出ない巣ごもりのゴールデンウイーク(GW)が29日からスタートする。
8日間、家から出ずに過ごせるのか? そんな不安を東京の食の街、築地場外の有名店が急きょ親子でチャレンジする巣ごもりキットを考案した。
肉の卸を中心に営業する創業91年の近江屋牛肉店では自家製ローストビーフをぜいたくに使った「花結び弁当~親子で作ろう築地体験キット」を「ニクの日」の29日からインターネット通販で発売開始する。
俵型の酢飯にローストビーフを巻いて、吹田商店「しそ塩昆布」、つきじ吉岡屋「高菜」、秋山商店「まぐろ節」、江戸一飯田「たらこ昆布」「ちりめん山椒(ざんしょ)」など築地場外の名店のフレーバーをのせたらできあがりだ。
もともとこの「花結び弁当」は花見の時期に合わせて大量発注を見込んでいた商品だった。それが「3つの密」の温床にもなることもあり、桜の花は満開なのに花見はお預け状態となった。近江屋の寺出昌弘社長は「花見ができなくても、この弁当は楽しめる。材料をバラバラにして家庭でつくることで、食育にもつながるし、親子の会話も生まれる。自信を持ってつくったローストビーフなので、巣ごもりのGWにはぴったり」と胸を張った。
申し込みは、近江屋のホームページ(HP)からになるが、商品の受け渡しは築地場外の本店に来てもらう方式をとった。「まず、築地場外を知ってほしい。感染リスクがあるため、家族の代表者1人限定で、日時を指定して、受け取りにいらしてください」と、滞在時間を少なくする来店方法を示し「他に買い物があるなら、店は紹介します。場外は大きなスーパーで、各店自慢のいい品物を扱っている。路地で屋外なので“3つの密”も避けられて風通しもいい」と、コロナウイルスを意識し、またスーパーでの買い物での物足りなさも解消させる。
築地場外市場では、GW期間の営業は営業自粛をしている日もあって、近江屋に弁当キットを受け取りに来る場合は4月30日、5月1日、2日、4日のいずれかになる。どうしても店頭で受け取ることのできない場合は、配送の手配もできている。キットの価格は税込みで2000円だ。
酢飯をハートや星型にして自由にローストビーフを巻いていい。寺出社長は「ハッシュタグを指定するので、インスタグラムに写真をあげてほしい。築地場外の店内に張ってフォトコンテストもしちゃおう」と張り切っている。
また、創業108年、つくだ煮の江戸一飯田では、4月5日から「おうちご飯応援セット」をHPでインターネット販売をしている。20点で税別2500円のAセット、11点で税別1500円のBセットを販売し、好評を得ている。それぞれ通常の値段の半額という大盤振る舞いだ。
江戸一飯田の飯田一雅社長は「これね、炊き込み飯なら安いBセットでいいからね」と念押しして、「つくだ煮のうまさを味わってもらうには、バター風味の炊き込みピラフが最高ですね」と鼻息荒くしゃべった。
その理由として「もちろん、炊飯器で米を炊くときにつくだ煮を入れるだけで炊き込み飯はできます。ちょっとひと手間かけて、土鍋を使って親子で完成させてほしい。無精な男性でもハマるかもしれない」と機械に頼らない手作りにこだわる。
冬が終わり告げそうだが、まだ夜は肌寒い。土鍋を片付けようか、迷いどころだと思う。「土鍋で炊いたご飯のおいしさを味わってほしい。ウチのリカにつくらせました」と奥さまを紹介した。
みじん切りの玉ネギとショウガをバターでゆっくり弱火で炒める。そこに研いで水を切った米を投入。黒コショウを「ちょっと多いかな」ぐらい振って、味のポイントをつくる。焦げないように全体に火が回ったら、土鍋に敷き詰める。
好みの野菜やキノコも軽くバターで炒めてちょい足ししてもいい。サンマうま煮、江戸一昆布、しょうがあさりの3つを米の上に乗せて、1センチほど浸たるように水を入れる。
強火にしてふたの穴から蒸気が吹きだしたら、弱火にして8分、さらに超弱火で6分、もう1度強火で20秒加熱したら、火を止めて10分蒸らしてできあがりとなる。
飯田社長は「確かに面倒です。炊飯器の方が速い。でも、巣ごもりは時間がたくさんある。悪戦苦闘するかもしれないけど、土鍋で炊く、しかもバター風味のピラフは格別ですよ」とウインクする。この「おうちごはん応援セット」には、GW期間から江戸一飯田オリジナルの炊き込みピラフのレシピも付ける予定だ。
そして、築地場外で初めてのたまご焼き専門店で68年の歴史を持つ「つきぢ松露」も家庭で作れる簡単調理キットを商品化した。もう単純。定番のたまご焼き1本と自家製食パン2斤のセット。たまご焼きをパンで挟んだ「松露サンド」だ。その名も「松露サンド巣ごもりキット」とした。
松露はたまご焼き専門店として開業する28年前に「松露寿司(すし)」として築地場外で産声をあげた。しかし、闇市で仕入れたネタを使っていたこともあり警察にマークされてしまった。その警察の目をかいくぐるために店頭でおかみさんがたまご焼きを焼いていた。あまりにもおいしかったので、たまご焼き専門店に転身したのだ。
松露サンドは、たまご焼きをパンで挟むという店内限定のまかない食だった。5年前、築地本願寺の盆踊りで初めて商品として販売した。大人気でまたたく間に完売。いまや、松露サンドは人気商品のひとつに成長している。
元来寿司店だったことから、酢飯の酸っぱさも残すため、パンにマヨネーズを塗ってから挟むのがオリジナルだ。
斎藤元志郎社長は「コロナの影響で客足はガクンと減った。パンは業者から取り寄せていたけど、そんなに大量にはさばけない。その食パンの仕入れを断って、たまご焼きで使う卵をふんだんに混ぜて自家製食パンをつくってみた」とここまで一気にまくし立て「やや黄色みがかっていて、これがウマい。コロナの影響で苦肉の策でつくったパン。このうまさも味わってほしい。いい機会なので今後は築地本店は自家製パンで松露サンドをつくろうと思う」と話した。
パンはスライスしていないので自分の好きな厚さに切る。パンに塗るのはマヨネーズにこだわることなく、ケチャップやソース、和風でしょうゆでもいいし、からしやゆずこしょうなども使っていい。「いろいろと自由に作って自分の松露サンドで楽しんで食べてください」と斎藤社長はアドバイスした。価格は税別で1600円。
さあ、長い長いGWの巣ごもり週間が始まる。おいしいものを家族で一緒につくってステイホームを満喫してみましょう。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース