山形県で暮らす人たちが独特の読み方をしている言葉がある。「①」だ。全国的には「マルイチ」だが、山形は「イチマル」。県民は愛着がある読み方なのに、県外で使うと驚かれ、肩身の狭い思いをすることも。そんなイチマルに、光があたる出来事があった。
「辞書さ載ったの!」
山形県のアルバイト加藤茉那美(まなみ)さん(22)は、三省堂国語辞典の「まる」の項目に、新たな解説が加わったことを喜んだ。
これまでは「まる」の解説の中にイチマルに関する記述はなかった。
それが2021年12月の改訂で、「まるいち=①の読み方。山形県では『いちまる』」と加わった。
つまり「①は山形県ではイチマルと読む」という説明が辞書に載ったのだ。
加藤さんは、中学で先生から「他県ではマルイチと言います」と聞いた時の衝撃が忘れられないという。
「イチマルって山形だげだん!? うそだべ……」
自分がマルイチに驚かされたように、「逆に今度は全国の人が辞書を見てびっくりしてくれたら楽しい」と声を弾ませた。
イチマルは、県内全域で使われており、学校や会議、日常会話など、あらゆるところで親しまれている。
県のツイッター公式アカウントも「全国的には『まるいち』ですが、山形県では『いちまる』です」とアピールする。
ただ、通じるのは基本的に県内だけ。県外で周りになじむためのひそかな苦労をする人、からかわれて悔しい経験をした人は少なくない。
40代女性は「関西の学校に進学した娘は、イチマルと言わないように気をつけていたみたい」。60代男性は、県外に出た大学時代、読み方を友達にいじられた経験がある。だが、「山形には山形の言い方があるんだ」と頑として変えなかった。辞書への掲載に「市民権を得た」と喜ぶ。
なぜ、辞書に掲載されることになったのか。
三省堂国語辞典の編纂(へん…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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