みなさま、しばしのごぶさたでした。「ケヅレーライス」の謎を追った向平でございます。おかげさまで大反響をいただきまして、第2弾をお届けできることになりました。何事も2回目は大事。テーマを色々思案していたら、すっかり春です。私の頭の隅にいつもあったのがみなさまからいただいた感想でした。春らしくて、リクエストが多かったもの……そうです、今回は「苺(いちご)フライ」に挑戦です!
80年前の新聞にケヅレーライス どんな味か作ってみた
大阪で生まれた朝日新聞は2021年3月に5万号を迎えました。歴史を実感してもらえる企画をと、古い紙面をめくるうちに、目にとまったのが戦前の「お料理コーナー」。味わいや出来映えが想像しづらい「謎のメニュー」があふれていました。5万号企画の取材に関わった向平真記者が、当時の紙面に記載されたレシピを頼りにメニューを再現する企画です。第1弾は1940年の紙面で紹介された「ケヅレーライス」。
衣をつけて揚げただけでは一瞬で終わってしまいます。そこで、他にも何かないかなと、過去の記事を調べました。するとどうでしょう。驚くほどに、シュールなイチゴ料理が次々と現れました。今回は頑張って、いっぺんに3品作ってみました。目指せ、イチゴ料理の鉄人!
拡大するイチゴを持つ筆者=2021年4月9日午後1時51分、大阪府茨木市、吉川恵子撮影
「馬鈴薯(じゃがいも)の苺和(あ)へ」(1915年6月5日付東京朝日朝刊)
「小鰺(こあじ)と茗荷(みょうが)のいちご和へ」(1916年6月3日付東京朝日朝刊)
「苺フライ」(1937年5月16日付東京夕刊)
馬鈴薯×イチゴ、鰺×イチゴ……ぜんぜん食欲がわかない感じなんですが、好奇心が勝ちました。ひょっとすると「ケヅレーライス」みたいに、おいしいかもしれませんし。
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「馬鈴薯の苺和へ」
ジャガイモを細切りにして砂糖・塩を加えた湯の中でゆでます。100年以上前のレシピなのですが、作り始めて気づいたことが一つ。塩も砂糖も分量が書かれてないんです。ひとまず薄味で煮て、煮崩したイチゴの中にジャガイモを加えてみました。
拡大する加熱したイチゴにゆでたジャガイモを加える=2021年3月3日午後1時27分、大阪府茨木市、吉川恵子撮影
微妙というか、何の味もしません。妻と相談して「もっとイチゴを加えよう」ということに。適当に塩味をつければ食べられるものにはなりますけど、それではイチゴを生かした味とは言えません。火を加えつつ、イチゴを追加すること数度。なんとも微妙な色のムースみたいなものができました。
拡大する完成したが……=2021年3月3日午後1時46分、大阪府茨木市、吉川恵子撮影
味はまあ「食べられなくはない」というレベル。結論から言うと「イチゴ要るか?」という感じでしょうか。
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「小鰺と茗荷のいちご和へ」
これほどイチゴが合わなそうな食材もありません。まずは、酢で締めたアジの片身を細切りにします。そのまま食べた方が絶対うまい。
拡大するアジの片身を酢で締め、細切りに=2021年3月3日午後0時57分、大阪府茨木市、吉川恵子撮影
レシピ通り、潰したイチゴと刻んだミョウガであえてみました。見た目はちょっと華やかかも……でもアジとイチゴなんですよね。
拡大する潰したイチゴとアジの切り身を混ぜる=2021年3月3日午後1時5分、大阪府茨木市、吉川恵子撮影
こちらも最初の試食結果は「微妙」。妻と導き出した結論は「酸っぱくすればイチゴが生きる」。酢を追加し、ミョウガもかなり思い切って入れたところ「案外いけるんじゃない?」というところまでたどり着きました。魚の臭みが消え、少し甘みもあるので、ちょっと変わった感じがあって面白いです。ただ、箸が止まらないというほどではない。料理バトルの前菜なら、意表を突く効果はあるかもですが。
拡大するシャレた一品に=2021年3月3日午後1時49分、大阪府茨木市、吉川恵子撮影
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「苺フライ」
お待たせしました。今回のメインディッシュ(?)苺フライに参りましょう。イチゴをタテに半分~四分の一に切り、小麦粉・卵・水・砂糖・塩を加えて混ぜた生地の中にくぐらせます。
馬鈴薯や鰺と違い、「映える…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル