遺言を書くのにあわせ、自分の人生を絵本にして残す――。そんなサービスを打ち出す司法書士事務所が昨秋、大阪市に誕生した。その名も「えほん遺言司法書士事務所」。手がけるのは、司法書士の弟と広告業界で働く姉。遺言を身近に感じてもらい、トラブルを避けるために遺言を作る人を増やすのがねらいだ。
まず、依頼者の半生を聞きとり、自分史や家族への思いをまとめた一冊の絵本をつくる。その絵本の中にポケットをつけ、法的に有効な遺言書を入れる。好きな作風にあわせ、16人以上の絵本作家からデザインを選ぶ。依頼から完成まで、半年ほどかかるという。
事業を始めたのは、司法書士の水上和巳さん(31)と姉の瞳さん(34)。
和巳さんは高校卒業後、司法書士の試験に24歳で合格。東京に拠点を置く大手の事務所に採用された。相続登記などを手がける中、遺言がないため、遺族間でトラブルになるケースを目の当たりにしてきた。
司法統計によれば、遺産分割事件のうち、残された財産が1千万円以下のケースが3割超を占める。和巳さんは「一般家庭でも起きる問題だ」と考え、独立を検討していた2020年夏、「残された人に余計な負担がかからないよう、遺言を書くことが楽しいと思えるサービスをできないか」と瞳さんに相談した。
瞳さんは広告業界に身を置き、選挙で投票すればタピオカ入りのドリンクが半額で買えるキャンペーンなど、社会課題の解決をめざすユニークな企画に関わってきた。和巳さんの話を受け、姉として、ビジネスパートナーとして協力できないかと考えた。
藍染めや漆塗りの遺言を提案してはどうか――。さまざまなサービスを検討した結果、行き着いたのが絵本だった。イラストで描かれ、文字が少なくて読みやすく、親しみやすい。絵本は、世代を問わず、受け入れられるコンテンツだと思っていたという。
昨年10月に大阪市中央区に…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル