プロの料理人も注目
大分県佐伯市鶴見にある「漁村女性グループめばる」。メンバー4人の小さな合同会社が、佐伯の漁師の家庭に伝わる調味料「ごまだし」を全国区に押し上げるけん引役となっている。発足から15年。漁師の妻たちが抱く海への愛着と、そこで捕れる魚への絶対の自信が小所帯の原動力だ。
元ブリ養殖場だったという製造所の敷地には、ごまだしの瓶詰が荷造りされ出荷を待っていた。6~7月にテレビの全国放送で紹介されて注文が激増し、週2千本と通常の4倍もの生産に追われているという。「忙しゅうて目が回りそうじゃわ」。代表の桑原政子さん(70)は、首に巻いた手ぬぐいで汗をぬぐうと人なつこい笑顔を見せた。
ごまだしは焼き魚の身をほぐしてゴマを合わせ、しょうゆやみりんで味付けしペースト状にしたもの。ゆでたうどんと熱湯にごまだしを加える「ごまだしうどん」は即席麺としてだけでなく、佐伯では酒の後の締めとしてもポピュラーだ。
この漁村フードが今、和・洋に幅広く使える万能調味料として、プロの料理人からも注目される存在となっている。めばるは、2012年に日本野菜ソムリエ協会のコンテストで最優秀賞を取った他、14年には農水省の「料理マスターズ」による認定品に選ばれるなど、その評価は高い。
「せっかくの命を一つも無駄にしたくない」
鶴見は県内一の水産基地で年間約1万7千トン(18年度)の水揚げを誇る。主力はサバやアジなどを捕る巻き網漁業で桑原さんの夫も巻き網漁師だ。帰港する船を迎えるときの美しい朝焼け、大漁の喜び-。「漁業は感動に満ちた仕事だ」と桑原さんは語る。だが魚が市場で売れ残ったりセリに間に合わなかったりして、捨てられるのも見てきた。
「もったいない。せっかくの命を一つも無駄にしたくない」。この思いで04年に漁師の妻仲間6人で「めばる」を立ち上げた。
最初は活魚の水槽をトラックに積んで佐伯や大分市で売っていた。ところが、消費者の多くが魚をさばけず旬も知らないなど「魚食文化の危機」にがくぜんとする。魚のおいしさをもっと知ってもらおうと加工品に転換したのが、ごまだし作りの発端だ。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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