6月は、多様な性のあり方について考える「プライド月間」。各地で性的少数者の存在や人権を知らせる様々な催しが開かれ、自分らしい性で生きようとする人たちがいます。暮らしたい街で、安心して人生を送るには――。
「うちはお母さんが2人の家庭なんです」
熊本県内でカナダ人の同性パートナー(44)と、小学6年の長男、小学4年の長女を育てる女性(47)は、長男が小学校に入学した直後の保護者会で公言した。
それ以降、母2人で学校行事にも参加しながら子育てしている。
2人は2006年に同性婚が認められているカナダで結婚。海外に滞在するためには法的に配偶者になったほうが便利というぐらいの気持ちだったが、「公的に認められ、誰にでも『マイワイフ』と彼女を紹介できる。責任感や安心感がわいて、結婚制度の重要性を感じた」と女性は話す。
ふるさとで子どもを育てたいと、東京を経て10年に熊本に戻り出産した。
子育てする性的少数者とつながりたいと支援団体を当たったが、当時は「熊本にはいないよ」「子を持つなんてできるの?」と聞き返されるような状況だった。
「いじめられたらどうする?」
子どもが保育園に入る直前まで女性2人が保護者であることを周囲に明らかにするか迷った。だが、隠すことで子どもが性的少数者への差別意識を内面化してしまうことのほうがよっぽどつらいんじゃないかと考えるようになった。
保育園の園長先生も「卒園生にもトランスジェンダーの子がいますから」とすぐに理解してくれた。
卒園し、地元の公立小学校に入学する際も校長先生に相談すると、全教職員向けの研修をすぐに実施してくれた。その後も毎年継続してくれている。
子どもは誰の前でも臆することなく、女性を「お母さん」と呼び、パートナーを「マミー」と呼ぶ。
「私は我が子と、他にもいるであろうLGBTの生徒や先生のために、私たちの存在を伝えてきたけど、周囲には親にも本当のことを言えない当事者は多い」という。
熊本は性的少数者の存在を公的に認める「同性パートナーシップ制度」の導入が、県を含む46自治体のうち6市町にとどまる。女性が暮らす自治体にもない。
女性はパートナーシップ制度の有無よりも親やコミュニティーの理解が大切だと考える。「小さな自治体では、役場から情報が漏れるかもと利用しない当事者も多い」という。
今後カナダに移住することも考えるが、日本の法律では「配偶者」ではないパートナーが再び日本に戻って暮らせるのか。決断には不安がつきまとう。
「地方でも海外でも、どこに住んでいても異性婚と同じ法的保護を受けられるよう同性婚を実現することが必要だと思う」(大貫聡子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル