朝日新聞の投稿欄「ひととき」に寄せられた作品の中から、今回は「手作り」にまつわるお話を集めました。世話になった人への思い出や感謝の気持ちにあふれています。
(ひととき)亡き我が子よ
2021年5月5日掲載
夕方、家のそばにあるスーパーへ行った。野菜売り場にはおいしそうなイチゴやバナナが並んでいる。それを見ると、ふと思い出す。
1年半前、41歳で逝った息子が、作業所へ通っていた頃のこと。おやつの時間に、みんなで食べてもらおうと、何度か手作りのイチゴ大福やバナナケーキを届けたことがあった。そんな日は、作業所から帰宅した息子がニコニコ笑顔で、「お母ちゃん、今日はありがとう」と欠かさず礼を言ってくれた。
葬式は音楽好きだった息子が歌った歌をみんなで聞き、あたたかな時間だった。亡くしてから、息子が難病と闘いながらも不満も言わず、母親の私を責めることもなく、明るく前向きに生きていたことに気づいた。時に作業所で大好きな職員さんと2人になると、涙を流す日もあったそうだ。つらい思いをさせて、申し訳なかったと思う。
毎朝、息子の遺影に向かい…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル