松島研人、藤牧幸一
アクセスチャージと呼ばれる回線使用料を得る目的で、NTTドコモの通話料無料プランを悪用して発信を繰り返したなどとして、愛知県警などは1日、通信事業会社「BIS」(東京都新宿区)の実質的経営者ら15人を組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺など)の疑いで逮捕したと発表した。
県警によると、アクセスチャージの仕組みを悪用した事件の摘発は全国初。BISは約4年半で少なくとも30億円を不正に得ていたとみられるという。
逮捕されたのは、BISの実質的経営者の渡部雅史容疑者(42)=東京都新宿区=、社長の福沢正文容疑者(40)=同西東京市=ら男女15人。県警は認否を明らかにしていない。
逮捕容疑は、渡部容疑者らは共謀し、2018年3月ごろ、ドコモのかけ放題プランで携帯電話500回線を契約。規約に反して、特殊な機械を使って自動発信を繰り返し、自社の固定電話などに昨年9月1日~23日に計約7500回、約2133時間にわたり電話し、通話料約570万円の支払いを免れたというもの。
通信事業者間では、互いの通信網をつないだ通話の場合、電話をかけた側から受けた側に、通話時間などに応じたアクセスチャージを支払う仕組み。
県警によると、今回ドコモは、BISの固定電話などの電話番号を割り振った通信事業者に、アクセスチャージを支払っていた。この事業者はBISにアクセスチャージの一部を着信手数料として還元する契約を結んでいた。渡部容疑者らは「ゲートウェー」と呼ばれる特殊な機械を使って、かけ放題プランの回線から、自社の固定電話などに大量に発信。通話時間が長くなればなるほど、通信事業者にドコモから多額のアクセスチャージが入り、BISが受け取る手数料も増える構図だったという。
ドコモは規約で、かけ放題プランの対象外の事例として「機械的な発信によって一定時間内に長時間または多数の通信」「特定の相手先への通話を大量に行い、他人から利益を得ること」を明記している。
別の事件の捜査で、BISが特殊詐欺に使われる電話番号の供給元になっている疑いが浮上。愛知県警が昨年9月に同社を家宅捜索し、稼働中のゲートウェーを発見したという。(松島研人、藤牧幸一)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル