「あそこに誰かいる」
双眼鏡で沖合をのぞきながら、福士徳富美(とくふみ)さん(47)がつぶやいた。800メートルほど先の波間にかすかだが、人の頭のようなものが見えた。
照りつける日差しで海面は光り、漁業用のブイがいくつも揺れている。でも、長年の経験で確信した。
「ブイじゃない。人が流されているんだ」
一緒にいた父親(75)と弟(44)の3人で、エンジン付きのボートを出す準備を始めた。だが、風は強く、下手すれば自分たちが遭難する恐れもある。
人影らしきものは、どんどん小さくなっていく。どうするか――。3人は風向きや波の高さを見て、決断した。
「よし、出そう」
その少し前の7月14日正午…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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