「けもフレ」見て捨てた「競争」への執着、「異なる存在」への気づき 魅了されたファンの本音、聞いてみた(withnews)

「勝ち負け」への執着、アニメが和らげてくれた

アニメの第一作が放映された2017年の春、私はとある地方都市に勤務していました。

後輩たちと現場を駆け回る毎日でしたが、なかなか結果が出せない。会社と現場の間で板挟みになり、思い悩んでいた時期に知ったのが、けもフレです。

「フレンズ」と呼ばれる、魅力的な女の子の姿をしたキャラクター。仲間と協力し、謎の敵「セルリアン」と闘う彼女たちの勇姿。主人公らの別れを予感させるストーリー展開……。何げなく眺めていた動画サイトで、偶然視聴するや、ぐいぐい引き込まれてしまいました。

作品を語る上で欠かせない要素もあります。キャラの特徴が動物に基づく点です。長い耳や、ふさふさした尻尾はもちろん、動物の顔をかたどったような模様の髪を持つフレンズも少なくありません。外見から性格に至るまで、一人として同じではないのです。

その多様さに触れたとき、私の心に渦巻く「勝ち負け」への執着が、少しだけ和らいだ気がしました。そんな経験に後押しされ、アニメの声優による舞台など、関連イベントにも参加するように。遠方に行く際は、会場周辺の動物園まで足を伸ばしました。

現場では、他のファンたちと知り合います。少しずつ顔見知りが増えた頃、ある疑問が頭の中に浮かびました。「彼ら・彼女らは、作品のどんな点に惹(ひ)かれたのだろう」。そうした思いに突き動かされて、私は取材をはじめました。

「こだわり」によって多様化した客層

関係者を訪ねて分かったこと。それは、作品を貫く「動物に対するこだわり」に魅せられた人が少なくない、という事実でした。

たとえば、第一作のアイキャッチ。実在する動物園のスタッフらによる、生態解説コーナーです。様々な野生生物の食性や、近縁種との見分け方などについて、音声で伝えられます。中にはユニークな語り口で、アニメのキャラ顔負けの人気を得た人物もいました。

私が話を聞いたファンの一人は、このコーナーに出演した飼育員に会ってみたいと、実際に動物園を訪ねたそうです。そこで吠(ほ)え声や獣臭といった、動物に関する「生の情報」に触れ「未知の面白さにはまり、今では通っている」と語っていました。

生活圏内で触れ合う動物は、ネコやイヌをはじめとするペットがほとんど。大型の哺乳類などは、メディア経由で見ることはあっても、目の当たりにする機会はそう多くないでしょう。だからこそ、様々な生き物をまとめて観察できる動物園の魅力を、再発見しているようでした。

「親子で訪れるもの」というイメージが強い「動物園」ですが、各施設を巡るファンの中には、既に成人している人も少なくありません。

大人になってもなお、自らの好奇心を満たしてくれる。そんな「知の受け皿」として動物園を再定義するような魅力が、けもフレにはあったのだと思います。


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Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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