大阪・西成の日雇い労働者のために年に1度開かれる「たそがれコンサート」が3年ぶりに帰ってきた。演奏するのは、大阪府立淀川工科高校の吹奏楽部。「どんな演奏会よりも大切で、世界一の舞台です」。顧問として長年指導し、昨年12月に亡くなった丸谷明夫さんが、何よりも大事にし、愛した舞台でもある。
7日夕方、少しずつ暗くなっていく三角公園に、大勢の観客が待っていた。首からタオルをさげた人、地面に敷かれたゴザに寝転びながら待つ人もいた。
午後6時15分。真っ白なジャケットを着た淀工吹奏楽部が登場すると、大きな拍手が湧いた。ファンファーレの音が鳴り響き、にぎやかな音楽が流れ出す。「カーペンターズ・フォーエバー」を響かせ、お次はピンクレディーなどのヒットメドレー。軽快な音に「うまいぞ~」「よかった」と観客から次々と声が飛ぶ。アンコールも入れ、約1時間超で幕を閉じた。
コロナ禍で3年ぶりの開催となり、どの部員にとっても初めて経験する「たそがれコンサート」だった。
フルートの井神日菜歌(ひなた)さん(3年)は、ずっとこの舞台を楽しみにしてきた。「人の心に響く演奏がどんなものか、感じることができた」と話す。
西成区出身だというクラリネットの西田優祐君(3年)は、特別な気持ちで臨んだ。「喜んでいるお客さんの顔や反応が見られて、この舞台ができてよかった」と笑う。
「たそがれコンサート」は、大阪市西成区のあいりん地区(通称・釜ケ崎)の萩之茶屋南公園(三角公園)で1981年に始まった。淀工は丸谷さんが顧問だったころから、長年出演を続けてきた。
32年前の初演、立ち去らなかった観客
今年、淀工の出演が30回目の節目を迎えた。コンサートを主催する西成労働福祉センター(大阪市西成区)と共催の大阪府が、淀工に感謝状を贈った。
淀工の舞台に初回から関わる西成労働福祉センター総務課長の松井環さん(57)は、思い出がある。
初回の出演になるはずだった…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル