<後編> 「スーパー宇宙線」を探せ!
宇宙から地球に降り注ぐ粒子「宇宙線」の中に、理論のエネルギー限界を超える「スーパー宇宙線」は存在するのか。「ある・ない」論争に終止符を打つべく、日米が中心となった「テレスコープアレイ(TA)実験」が2008年に始まった。
前編では、日本と米国で過去に大論争となった「スーパー宇宙線」の謎について紹介しました。後編では、論争の行方、新たな謎を解くための研究者たちの挑戦について紹介します。
米ユタ州の小さな町デルタ郊外の荒野。ここに点在するのが、ベッドのような形をした粒子検出器。宇宙線が地球の大気とぶつかると生まれる大量の粒子「空気シャワー」を24時間検出できる装置だ。1.2キロ間隔で並ぶ数は507台。その面積は琵琶湖とほぼ同じ約700平方キロメートルになる。
さらに検出器を取り囲むように望遠鏡を3カ所設置し、空気シャワーが引き起こす蛍光を捉える。望遠鏡は月のない晴れた夜しか使えないが、シャワーが発達する様子が見え、元の宇宙線の種類やエネルギーの大きさの判断に役立つ。
「チャレンジングだが面白かった」
日本側代表を務めた東京大宇宙線研究所の福島正己名誉教授によると、04年に始まった建設は苦労の連続だった。
遠隔で検出データを集めるため、当時はまだ新しかった無線LANをつけた検出器を作り、広大なエリアにヘリで運搬。故障すれば歩いて修理に向かった。土地の使用許可や環境保護のため野生植物の調査もした。「チャレンジングだったが面白かった。矛盾する結果をはっきりさせたいという情熱をみんな持っていた」
スーパー宇宙線の存否はどうだったのか。
実験グループが13年に出し…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル