木元健二
足を運ばなくても迫真の城内めぐりを――。松江市と大学の研究機関が、VR(仮想現実)技術を使った国宝・松江城の映像製作を進めている。エレベーターなどがない天守の内部や、最上階から見える風景などがリアルな映像で体験でき、高齢者や車いす利用者らも気軽に「登閣」できることを目指す。
市は今年3月、同志社大学文化遺産情報科学調査研究センター(京都府)と協定を締結。松江城の魅力を県内外の多くの人に実感してもらおうと、天守のVR映像を共同開発している。
現段階で、5層の天守の最上階や、城の特徴ともいえる2層分を貫く「通し柱」が見える2~3階、籠城(ろうじょう)対策でつくられたとされる地下にある井戸などの映像が完成した。
10月26日には市役所で報告会があり、上定昭仁市長が体験。城内を一歩一歩進み、地下の井戸をのぞき込むなどした。実は高い所が苦手というが、城の最上階からの市中の展望に「これほどリアルなものとは……。まずは市民のみなさんに見てもらいたい。観光誘客につなげられる可能性もある」と語った。
津村宏臣・同センター長(文化資源政策)は「みんなで価値を分かち合うべき国宝だが、国宝であるがゆえに補助設備を十分に設置できず、年配の人や障害のある人を遠ざけがちだ。臨場感にあふれるVR開発は、松江城の貴重さを伝える有力な一手だと考えている」と話す。
来春をめどに、城全体の映像をいったん完成させる予定。その後、市民に試験的に見てもらい、改良点を探る。将来は城近くで体験スポットを設けたり、データの一部をスマホで見られるようにしたりする構想があるという。(木元健二)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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