8月初めの朝。関西地方の大学に通う男性(21)が実家に帰省していたところ、二つ上の姉が興奮して話しかけてきた。
「しんちゃん、ゲイやったんて!」
しんちゃんとは、日本レコード大賞で最優秀新人賞を受賞したこともある男女混合グループ「AAA(トリプルエー)」のメンバー、與真司郎(あたえしんじろう)さん(34)のことだ。
2人は、小学生のころからAAAのファンで、姉は特にしんちゃんを推していた。
その日、姉は、しんちゃんが7月26日のファンミーティングでカミングアウトしたというネットの記事を見せてくれた。
衝撃を受けている姉の横で、男性はうれしさを抑えきれなくなった。
その前夜のことだった。
家族で囲んだ食卓。姉が、弟の恋人について話題をふった。
「もし男やったらどうする?」
間髪入れず、父はこう答えた。
「それやったら、終わりやわ」
男性は、「今は言えない」と思ったという。
テレビ番組を見るときの様子などから、姉がゲイに偏見を抱いていることは分かっていた。だが、姉の大好きな、かっこいいしんちゃんも自分と同じゲイだったんじゃないか……。
夜、自室でしんちゃんがカミングアウトしたときの動画を見ながら、「自分もカミングアウトしたいという気持ちに火がついた」。
「人に見えるように発信したら、やりやすいのでは」と考え、カミングアウトについて報告する匿名アカウントをSNSに作った。
重く受け止めてもらいたくなかったから、カミングアウト活動を「カミ活」と名付けた。
「8月17日 カミ活1 最近よく遊ぶようになった大学の友達にカミングアウトしました」
その友人は、日ごろから人の話を否定しない優しい人だった。たまたま恋愛の話になったとき、「実は彼氏おんねん」と言ってみた。すると、「え? うらやましい」と返ってきた。その後は普通の恋愛話になった。
その10日後のカミ活2は…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル