難病「網膜色素変性症」の患者に、人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の細胞を移植する世界初の臨床研究が実施された。視細胞が失われ失明のリスクもある難病だが、治療法の確立は長らく道半ばだった。「ずっと待ち続けていた」。闘病を続ける患者は期待を寄せる一方、安全面をはじめとした課題も残っている。(石橋明日佳) 「無事に手術を終えることができほっとした。小さな一歩だが、踏み出せた」。臨床研究について神戸市立神戸アイセンターは16日夜に記者会見。執刀した栗本康夫病院長は安堵(あんど)の様子を見せた。 「もう一度、視力が回復する日も夢ではないのかもしれない」。患者らでつくる日本網膜色素変性症協会(東京)の伊藤節代理事(64)=神戸市兵庫区=が声を弾ませた。 網膜色素変性症は4千~8千人に1人が発症するとされる国の指定難病で、国内の推定患者は約4万人。病の進行とともに視細胞が失われ、視力が低下し、視野が狭くなっていく。症状は両目で同時に進行し、失明に至るケースもある。 伊藤さんは32歳のとき、自宅近くの公園の階段を降りようとしたときに違和感を覚えた。「暗くて歩きづらい」。受診した眼科で聞きなれない病名を耳にした。網膜色素変性だった。 眼鏡をかけて1・2程度あった視力はその後、低下を続け、視野も狭まった。今も明るさや、コントラストがはっきりしている色は判別でき、料理や掃除といった家事はこなせる。しかし「視界全体に濃い霧がかかっている感じ」。一人での外出はできない。 国内の患者は増えているとされる。遺伝子治療なども模索されているが、根本的な治療法は現在も存在しない。伊藤さんも6種類の薬を服用するが「気休め程度。効果があるのかどうかは分からない」と話す。 それゆえに今回の臨床研究に注目している。ただ、治療効果や安全性などについては慎重な確認が不可欠だ。実用化までの行方をじっくり見守りたいという。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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