「そのパソコンは壊れているので修理にお金が……」「市役所から還付金があるので……」。一本の電話で始まる特殊詐欺事件。被害を未然に防いだとして警察から4度、感謝状を贈られたコンビニエンスストアの店長がいる。こつや、こだわりとは……。
「スマホ切って、かかってきても出ないで」男性を説得
「あと15万円、下ろしたかったんだけど」。店の角にあるATMでそう漏らした70代の男性。手にはスマートフォンで落ち着かない様子。店長の新美由美子さん(49)はピンときた。
愛知県東浦町緒川の幹線道路沿いにあるローソン東浦鰻池(うなぎいけ)店。8月24日午後10時すぎ。高額の買い物をするには遅い時間だ。
新美さんが話を聞くと、男性は40万円を必要としていたが、すでに1日の引き出し限度額を超えていた。他のコンビニで電子マネー(プリペイドカード)を購入していて、さらに買うつもりだったとも。
「それ、詐欺ですから」と新美さんは声を上げた。警察を呼ぶことを伝えると男性は戸惑った表情を見せた。「振り込んでしまったら、お金は戻ってきませんよ」「(通話状態の)スマホは切って。かかってきても出ないで」。署員が駆けつけるまでの約10分間、同様の詐欺事件が相次いでいることも説明し、購入を断念させた。
半田署によると、男性がパソコンを使用中に警告画面が現れた。表示された番号に電話したところ、犯人側から修理代名目として、コンビニで電子マネーを買うよう迫られたという。電子マネーを買ってカード番号を伝えても、「これは使えない」とそのたびに要求を繰り返す。結果、四つのコンビニで購入した電子マネー計75万円分をだまし取られた。
電子マネーには「使い方、大丈夫ですか」
新美さんによると、男性は他の4軒の店でも「詐欺ではないか」と注意されたが聞かなかったという。
この件で新美さんは9月14日、半田署長から被害の拡大を防いだとして感謝状を贈られた。通算4度目。過去3度は、2017年5月に50万円、18年2月に2万円、21年2月に4万9千円の各架空請求詐欺による被害を防いだ功績だった。
16年に夫(55)と現在の店を開業したときから特殊詐欺事件が社会問題になっていた。少しでも被害を減らせるよう考え、お客に「どうしましたか」と声をかけるようにしてきた。
例えば架空請求詐欺でよく使われる電子マネー。「使い方、大丈夫ですか」と聞くようにしている。
高齢者が高額の電子マネーを買おうとしている▽電子マネーを「どこに売っているのか」と聞いてくる▽通話状態の携帯電話を持っている……。これまでの経験で分かった被害者の様子だ。
苦労もあるけれど…「詐欺がなくならない以上、ずっと続けていく」
気苦労も少なくない。
今年8月、40万円分の電子…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル