「ただいま。今日は何の料理を作ろうかな」
部品加工会社に勤めるベトナム人のファン・タイ・ユィさん(35)=大阪市西淀川区=は夕方に帰宅すると、妻の写真に話しかけるのが日課だ。
2階の寝室に入ると、妻のお気に入りのハンモックや部屋着、化粧品が目に入る。妻が使っていた椅子に腰を下ろし、笑顔の妻に向かって、その日の出来事を話す。気がつくと、30分ほどたっている。
そんな日々が半年ほど続く。
4月3日朝。ユィさんは、妻ボ・ティ・レ・クインさん(当時31)がアルバイト先の弁当店に出勤するのを見送った。
昼過ぎ。仕事が休みで自宅にいたユィさんは、胸騒ぎがした。いつもの帰宅時間から1時間ほどたっていた。携帯電話にかけても、つながらない。
家を出て、自転車で通勤路を捜したが、姿は見えない。午後3時ごろ、弁当店に電話すると、店長から伝えられた。「朝に出かけたまま、戻ってこない」
それから未明まで、友人らと捜し回った。淀川を越え、自宅から約8キロ離れた大阪城周辺まで捜したが、見つからない。帰宅しても一睡もできないまま、朝を迎えた。
再び外に出て、駅近くを捜していると、電話が鳴った。警察署からだった。署に向かうと、妻が遺体で見つかったと告げられた。場所は弁当店が入る建物の2階という。
混乱して、何も考えられなくなった。
大阪市淀川区の建物2階で4月4日朝、1階の弁当店で働くボ・ティ・レ・クインさん(当時31)が死亡しているのが見つかった。府警は同月6日、2階に住む男(60)を強盗殺人などの疑いで逮捕した。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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