「できない」仕事でも受け続ける若手社長 農家と町工場をつなぐまで

 「ロブストス」という名の株式会社で代表取締役社長を務める高垣達郎さん(36)はいま、各地の農家から注目を浴びる存在です。農業と町工場の技術を結びつけ、農機具を専門に特注部品を作り出しています。高垣さんは何を目指してきたのでしょう。その歩みを追いました

高垣達郎さん。ホウレンソウが茂る畑で、自社で開発した「アジャスタブルスプレーヤ」と。オフィスから近い知人の農家の畑で、アイデアを深めることも多い=群馬県伊勢崎市

記事の後半では、高垣さんへのインタビューの一問一答をお読み頂けます。

 農家は現場で様々な悩みを抱えるが、その一つが農機具だ。気候や土壌の違いなどで既製品が畑に合わない。古い製品でメーカーのサポートが受けられない。交換部品の在庫もない。ロブストスではそうした声を聞き、部品や機具を製作する。

 群馬県を中心に100以上の協力工場があり、加工工程を細分化して最適な技術を持つ工場に発注する。畑の畝(うね)幅に合わせて里芋掘り取り機の部品サイズを伸ばしたいという依頼では、動きに不具合が出ないよう正確に図面化して加工した鉄板を溶接。廃番になったゴボウ収穫機は、すり減った歯車部分を修理する。

 高垣さんは東京都大田区育ち。中学3年から10年間、ダンスに打ち込むが挫折する。早稲田大を卒業し、25歳で無職。ふと育った町を見渡すと、リーマン・ショックのただ中で苦しむ町工場の姿があった。中小の製造業を盛り上げたいと、国家公務員か研究者を目指して独学し、地域活性化がテーマの勉強会に通った。そこで群馬の町工場経営者らと出会い、不況の中でも農機具に関する相談が寄せられていることを知った。

 「農機具のカスタマイズ」というプランで彼らとともに出場した農業ビジネスコンテストで優勝し、そのまま群馬に移住。ものづくりの経験はなく、機械工学を学んだこともない。はじめの5年間は夜の町工場で鉄パイプを削り、技術を覚えつつ、稼いだお金を事業費にあてた。昼間は農家を訪ね、現場のニーズを聞いて回る日々。「製造業を助けようと始めたけど、農家さんとふれ合ううち、いつしか農家のための仕事になっていたんです」

 現場の声を直接聞くことにこだわる。今年発売した除草剤などの液体散布機具・アジャスタブルスプレーヤは、近くの農家の声をきっかけに2年半かけて製品化。畑に合わせ、歩きながら自在に幅を変えられる使い勝手が喜ばれ、全国から注文が相次ぐ。「農家が本当に求めている、困りごとを解決したい」(文・写真 関田航

インタビューの一問一答

ここからは、高垣さんへのインタビューの一問一答です。ロブストスがどのように農家の「困りごと」と向き合い、会社の経営も軌道に乗せたのか、聞いています。

 ――仕事の内容について教えてください。

 農業機械専門で特注部品を単品フルオーダーメイドで製作しています。具体的には、農家の要望に応じた農機具のカスタマイズと、廃番部品の修復です。農業は地域や栽培する作物、耕作面積などの条件が違えば農機具への要求は変わりますが、大手機械メーカーは個々のニーズにまで対応しきれません。そうした「普通なら断られる」現場の困りごとの解決策を形にしています。

――「単品特注対応」は利益を生みにくいですが、どう克服したのでしょう。

 「継続」と「工夫」の積み重ねです。

 農機具の単品特注で利益は出…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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