「でくっこつば」 女将を救ったお国言葉 今は故郷に帰れなくても

 先日、久しぶりに友人の結婚式に参列した。新郎新婦の父親が熊本出身で高校の同級生。同窓会での再会が縁で、両家は結ばれたという。コロナ禍で、2度の延期を余儀なくされた披露宴。心温まるひとときの余韻に浸り、ふと熊本の味に触れたくなった。

 東京・目黒駅から徒歩2分。和モダンな造りの「そま莉」は、熊本県小国町出身の河津幸恵(さちえ)さん(46)が2014年に開業した和食店だ。

 いただいたのは、名物の桜肉しゃぶしゃぶ。熊本から直送された馬肉の肩ロースの薄切りを、カツオと昆布の合わせだしに、サッとさらすと、きれいな桜色になった。ポン酢につけて、まずは一口。うまみがふわりと広がる。たっぷりのネギと一緒に食べるのがお勧めという。

 今度はそばつゆにつけ、もう一口。馬肉の甘みとの相性がいい。球磨(くま)焼酎をソーダ割りにし、レモンを垂らした特製のレモンサワーが、つい進んでしまう。

 馬肉は熊本が国内生産量1位を誇る。なぜか。豊臣秀吉による朝鮮出兵の際、兵糧が底をついた加藤清正は、軍馬の肉を食べて飢えをしのいだという。清正はその肉のおいしさが忘れられず、熊本に帰った後に馬肉食を広めたと語りつがれている。

 馬刺しも有名だが、苦手な人もいるという。誰もが抵抗なく食べられ、メインとなる料理ができないか。そんな思いから、看板メニューが生まれたという。

 熊本の味でもてなしたいと願う河津さんには、転機があった。

 地元・小国の中学を卒業後…

この記事は有料会員記事です。残り1852文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【5/10まで】記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment