編集委員・副島英樹
「黒い雨」を浴びた人は被爆者だと認めた14日の広島高裁判決について、研究者や本紙編集委員が読み解きました。
「戦争の被害、どう償うか」
<被爆者援護策に詳しい直野章子・京都大准教授(社会学)の話>
「黒い雨訴訟」の背景には、1980年に出された厚生相(当時)の諮問機関「原爆被爆者対策基本問題懇談会(基本懇)」の報告書がある。これによって政府は「被爆地域の指定は、十分な科学的根拠に基づいて行われるべきだ」と歯止めをかけ、被爆者援護の対象を狭めてきた。黒い雨の降った範囲や降り注いだ放射性降下物の量が特定できないにもかかわらず、住民側に健康障害を引き起こすだけの値であるという「科学的証明」を求める理不尽を強いることにもつながっている。政府は被爆者援護法の前身である原爆医療法の立法精神に立ち返り、「原爆放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」はすべて救うという考え方で、援護のあり方を見直すべきだ。何よりも問われるのは、国が遂行した戦争で受けた被害をどう償うかという政治の姿勢だ。戦後76年、援護のない状態におかれた空襲被害者をどう救済するかも含めて議論を広げるきっかけにしてほしい。
「放射線関係の研究、行政すべてかかわる問題」
<広島大原爆放射線医科学研究所で長年研究し、黒い雨の雨域についても調査研究を続ける大瀧慈(めぐ)・広島大名誉教授(応用統計学)の話>
控訴棄却はある意味当然だ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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