どうか、ひとりでも早く帰ってきて――。北海道・知床半島沖で起きた観光船「KAZUⅠ(カズワン)」の沈没事故から23日で9カ月。乗客への思いを胸に、いまも月命日の献花を続ける人がいる。カズワンが出港した斜里町のウトロ漁港近くで「民宿いしやま」を営む伊藤憲子さん(76)だ。
なぜ、事故の月命日に献花を続けてきたのか。その思いの背景には、かつて自身の民宿に泊まったある大学生の存在がありました。
事故があった昨年4月23日は、釧路市内の病院に入院する義母との面会日だった。夫の車でウトロから約3時間かかる釧路市へ向かう道中、ウトロにいた娘からの一報で、事故の発生を知った。
「こんなに波がある日になぜ」。胸騒ぎを感じた。義母との面会を10分で切り上げると、急いでウトロへと戻った。
その夜は大騒ぎだった。民宿にはひっきりなしに事故の問い合わせが殺到した。
「キクの花は、思いが届く」
翌日には、現地入りする陸上…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル