「どんな小さな遺留品でもいい」漁に出ると、波間に目をこらした

 「この海に生きる者として、引き続き力を尽くしたい」

 昨年5月5日、悔しさを押し殺すように話した。海上保安庁の要請で続けてきた一斉捜索が、この日に終わった。

 北海道斜里町の漁師らが参加する斜里救難所の副救助長を務める。観光船「KAZUⅠ(カズワン)」の事故翌日から、地元の漁師たちと連日、捜索に出た。

古坂彰彦さん

64歳。斜里救難所副救助長

 大きな海難事故は初めてではない。仲間の死にも何度も直面してきた。自身が遭難しかけたことだってある。

 「でもね、今回は……」

 そう言って、しばらく宙を見つめた。

 捜索から3日目のことだ。

 岬の突端近くで、仲間が小さなリュックサックを見つけた。直前に遺体で見つかった3歳の女の子のものだった。

「安全運航を信じた純粋さが……」

 子どもに食べさせようと母親…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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