能登半島地震で多くの家屋が倒壊し、津波の被害を受けた石川県能登町の松波地区。20日、「魚正鮮魚店」の梶山浩一さん(76)は、腐ったブリや干物を冷蔵ケースから取り出し、ゴミ袋に移していた。幸い店舗は倒壊を免れたが、店を再開したとしても、周辺は2次避難が進み、住民が戻る時期も分からない。それでも、梶山さんは「店をやめるつもりはさらさらない。やる気満々」と笑う。
梶山さんが魚正を創業したのは1980年ごろ。当時、奥能登は観光バブルに沸き、旅館や民宿などから注文が相次ぎ、寝る間も惜しんで働いた。バブルの終わりとともに徐々に観光客も減り続け、現在地区に残る個人商店は魚正のみになったという。
子どもの数もみるみる減り、「このままじゃつぶれる」と集落の未来には悲観的だった。そこに今回の地震が襲った。津波で多くの漁船が損傷し、市場も開く見通しは立たない。それでも、「いつか年寄りが帰ってきたとき、魚屋でもなかったら寂しいやんか。もうからんでも、店先で話し相手になれればそれでええ」と話す。断水が解消されれば店を片付け、再開の準備を始めるつもりだ。(細川卓)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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