「なぜ、不起訴?」 ぬいぐるみで伝えた性被害、民事でようやく認定

 「なぜ、不起訴になったのか」

 母親(57)は今も納得がいかない。

 福岡県内に住む知的障害のある娘(25)は2017年、通っていた同県久留米市の就労移行支援事業所の男性所長から、施設内で胸を触られたり、ホテルに連れ込まれ、わいせつな行為をされたりした。

 虐待は通い始めて2カ月が過ぎた10月ごろから、始まった。

 「様子がおかしい」

 以前、通っていた別の障害者支援施設の職員が12月に娘の異変に気づいた。手首を切ろうとしたり、「死にたい」と訴えたり。聞き取りを重ね、性被害が判明した。

刑法の性犯罪規定の見直しが進んでいます。国の法制審議会の部会は24日、法改正の試案を示しました。現行法では被害者の心身の障害に乗じた性犯罪の立件は、困難と言われています。ある女性の事件から、その理由と課題を探りました。

 母娘は久留米署に被害届を提出した。娘の聴取は若い女性の警察官が担当したが、母親や職員らの付き添いは許されなかった。

 療育手帳に記された娘の知的能力は、「小学校中学年程度」。母親らは「言語化して被害を訴えるのは難しい」と心配した。

 「英語の名前で、ネコが描かれた看板だった」という娘の証言に基づき、ホテルが特定され、施設長の車の出入りが確認されるなど、捜査は進んだ。

 だが、福岡地検久留米支部は20年3月、強制わいせつの疑いで書類送検された所長を不起訴処分にした。

 母親は地検から「暴行や脅迫があったという証拠がない」と説明を受けた。

 県警からも処罰の見通しについて「施設内で触られたのは『公然』わいせつにあたらない」「(性暴力の被害者が)法で守られる年齢は10代まで」などと言われたという。

 母親には今も悔しさが残る…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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