「なんぼ見ても、ロシアしか見えない」出航前に冗談飛ばした船長

 その日の朝、北海道斜里町知床半島沖は穏やかだった。

 だが、春先の知床沖は、海の状態が急変することがある。それは地元の漁師にとって常識だった。

 そして、昨年4月23日がその日だということも。

 「うちら漁師でも引き返してきたのに、出航するの?」

 地元漁師の男性は23日の朝、観光船「KAZUⅠ(カズワン)」の豊田徳幸船長にそうたずねた。

 カズワンを運航する知床遊覧船の事務所前だった。

 豊田船長は「お客さんもいるからね」と顔をしかめた。

 「これから波も出てくるから行かない方がいい。やめた方がいい」

 男性は食い下がった。

 すると、豊田船長は「うーん」と考え込んだ後、「まあ、行けるところまで行ってみる」と答えた。

 豊田船長はその後、軽トラックに乗り、カズワンの拠点であるウトロ漁港の方へと向かった。

 別の男性もこの日、ウトロ漁港で、豊田船長と顔を合わせていた。豊田船長は、出航前の準備に追われている様子だった。

出航直前、疲れた様子の船長

 「昼から波が出そうだから…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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