太平洋戦争の体験者が減る中、あの経験をどう語り継いでいくのか。原爆被害を正面から見つめた漫画「はだしのゲン」を講談で語っている講談師の神田香織さんに話を聞きました。
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原爆被害を正面から見つめた中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」を、講談に仕立てて37年間語り続けています。
39年前、前座から二ツ目に昇進したころ、サイパンでバンザイクリフを見て戦争の惨状に鳥肌が立ち、戦争を語りたいと思いました。その後、取材をかねて広島の原爆資料館を訪れた際、売店にあった「はだしのゲン」を全巻買って再読しました。そこに描かれたエネルギーに改めて圧倒されたのです。
原爆被害や戦争をつづった本や映像はたくさんありますが、講談で「語る」ことの意味は何か。それは固まってしまった歴史に命を吹き込むこと。生身の私が語勢を込めて歴史を語れば、聞く方の眼前に今まさにそれが起きていることとして受けとめてもらえるのではないか。やけどで皮膚が大きくむけて垂れ下がる、腹から出た腸を引きずって歩く。そういう現場の目撃者になってほしいのです。
講談でやるにあたり、被爆者…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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