戦後の那覇市を舞台にした小説「入れ子の水は月に轢(ひ)かれ」で作家デビューした沖縄出身のオーガニックゆうきさん(29)。幼少期から見慣れてきた基地反対集会や座り込み運動は本土の大学で冷笑され、沖縄と本土との溝の深さに大きなショックを受けました。本土から「ひとごと」と見られがちな沖縄について「文学は他者との架け橋になる」と語ります。
作家。1992年生まれ、沖縄県浦添出身。本名は上里叶子(きょうこ)。京都大学在学中。2018年に「入れ子の水は月に轢(ひ)かれ」がアガサ・クリスティー賞に選ばれ、作家デビュー。今年4月に文庫化された。現在は、沖縄の米軍基地や首里城をテーマにした作品を構想している。
――デビュー作の舞台は沖縄でした。
「生まれ育った沖縄を取り上げたいと思っていました。舞台になっている那覇市の水上店舗には、曽祖母が卵を売っていた店もありました。執筆にあたって多くの店主に話を聞いたり、公文書館で米軍統治時代の資料を調べたりする中で、水上店舗は戦後、戦争で何もなくなった場所に人々が集まって闇市ができ、復興していった『証し』だと分かり、題材にしようと考えました」
身近にあった沖縄戦や基地問題 外に出て気づいたこと
――作品では、沖縄戦や基地問題が背景にあると強く感じさせます。いつから、こうした問題に関心を持ちましたか?
「赤ちゃんの時から両親に…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル