日本人の名前をローマ字で書くとき、姓と名のどっちが先か。先日、そんな話題で注目されたローマ字。かつては日本を知る手がかりとして、やがて日本人自身も、漢字より平易な文字として使い始めます。その歴史をひもとくと――。
ロンドンの大英図書館に、黄土色の表紙で手のひらサイズの本がある。1592年に刊行されたもので、来日したキリスト教宣教師向けの「平家物語」だ。開くと、日本のローマ字の始まりを見ることができる。
「NIFON NO COTOBA TO Historia uo narai xiran to FOSSVRV……」
漢字かな交じりで書くなら、「日本の言葉とヒストリアを習い知らんと欲する……」。
1549年のフランシスコ・ザビエル以降、やってくるようになった宣教師たちが学ぶため、当時の日本語の口語がポルトガル語式のつづりで記されている。ローマ字による日本語の表記はこうして、外国人が外国人のためにつくり、始まった。
キリシタン弾圧で宣教師がいなくなっても、江戸期には一部の蘭学者がオランダ語式のローマ字を使い、その後も独語式や仏語式などを経て現代に至る英語式の「ヘボン式」が広まった。
日本人がローマ字を自分たちのために使い出すきっかけは、明治維新だ。難しい漢字を覚えるより新たな知識や技術の習得を、との流れが起きた。漢字をなくし、かな文字だけにしようとか、ローマ字を国字に、という運動が盛んになった。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル