「たまには日々の仕事を忘れ、自然の中でぼーっとしたいな」。そんなことを考えていた時、福岡県桂川町の町営宿泊施設「ゆのうら体験の杜(もり)」が、冬季限定でテントサイトを開設しているとの情報を耳にした。澄み切った夜空に広がる満天の星やたき火のぬくもり…。暖かい季節とは違った趣があるという冬キャンプを体験しようと、体験の杜へ向かった。
町役場から車を10分ほど走らせて体験の杜に着き、まず感じたのは静寂だった。聞こえるのは動物の鳴き声くらい。そよ風が心地いい。テントサイト(6区画)は施設を囲むように広がる緑地にあった。平日のこの日は他に利用者がおらず、静けさを独り占めできると思うと、うれしくなった。
体験の杜は2018年7月にオープンし、星空観察や弥山岳(377メートル)登山イベントなどの拠点となっている。冬季限定のテントサイトは昨年12月に始めた。町企画財政課の斉藤聖一係長は「人気の阿蘇やくじゅうほど冷え込まない。福岡市内から車で1時間程度のアクセスの良さも売り」と話す。
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キャンプといえば夏を思い浮かべるが、シーズンオフとされてきた冬のキャンプも徐々に浸透しているようだ。日本オートキャンプ協会(東京)の一昨年の調査では、1、2月にキャンプをした人はそれぞれ5・9%、5・7%だった。5年前と比べて3ポイントほど増えている。キャンプ用品を扱う「好日山荘アイム小倉店」(北九州市)によると、冬キャンプはしっかり防寒対策をすれば、私のような初心者でも楽しめるという。
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サイトではまず、知人に借りたテントを張った。作業は約1時間で終了。しばらくして「少し肌寒くなったな」と思っていると、斉藤係長が「スウェーデントーチはいかが?」と提案してくれた。丸太を縦にして十字形の切り込みを入れ、内側に火を付ける北欧発祥のたき火だそうだ。まきをくべる必要がなく、鍋などを乗せられると聞いてびっくり。体験の杜でも販売準備をしているという。
夜が深まり、スウェーデントーチが燃え尽きそうになったので、まきとたき火台を用意。うまく火が付くか心配だったが、ガスバーナーを使い、何度目かの挑戦で炎が上がった。たき火は生まれて初めて。焼きマシュマロを楽しみながら、こう思った。「冬キャンプの魅力は、ゆっくりと暖をとる時間だ」
携帯用ガスこんろで作った鍋料理を食べ終え、空を見上げた。施設のうたい文句が「星降る杜」だったからだ。この日は曇りがちだったが、それでも無数の星がまたたき、首が痛くなるまで眺め続けてしまった。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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