新型コロナウイルスへの感染対策を強化する「まん延防止等重点措置」が9日から広島県で適用される。対象地域は当初の5市町から13市町に拡大されることに。時短営業や酒類の提供自粛を求められる飲食店からはため息が漏れ、医療現場は感染者の急増ぶりに危機感を募らせている。
広島県では西部の広島市や廿日市市のほか、東部の福山市や尾道市なども含む13市町が重点措置の対象になった。
県内では7日、過去最多の429人の感染が確認された。前日の1・6倍だ。県の試算では、2日で2倍のペースで感染者が増えた場合、今月16、17日には感染者が8千人に近づく。
7日に記者会見した湯崎英彦知事は「異常な速さで感染が拡大し、医療逼迫(ひっぱく)の恐れが高まってくる。感染状況次第で(重点措置対象市町の)追加や緊急事態宣言はありえる」と語った。
対象地域では飲食店に午後8時までの営業時間短縮と酒類の提供停止を求め、応じた店には協力支援金を支給する。県民には外出の半減や出勤者の削減を求める。対象区域以外も含め、県内で11日以降に予定されるイベントには最大2万人の人数上限を設ける。
広島市中心部にある西日本有数の繁華街・流川。「またか」。ハイボールバーの店長山口隆太さん(38)は肩を落とした。1日の新規感染者ゼロが3週間続いた昨年12月は県外からの客もいて、満席になる日も多かったという。「(感染拡大が)思ったよりずっと速かった。酒がメインなので難しい。休業するしかない」と話した。
沖縄料理屋を営む男性(45)は「数日前から客の流れがピタッと止まった。(感染者の)人数が増えたからだと思う」と語った。営業しても売り上げは協力金の額に届かないとみて、自主的に休業を決めた。
居酒屋を営む男性(43)は感染対策を講じ、県の認証も取っていた。「営業が(一律に)制限されるのは理不尽だ」と憤る。ただ、常連客の大半は高齢といい、「店を開けても来ないから閉めた方がいいよね。葛藤はある」
医療現場は警戒を強める。広島県によると、6日時点で即応できる入院病床(483床)の使用率は26・7%。無症状や軽症の人を受け入れる宿泊療養施設(1566室)の使用率は22・5%だ。
ただ、県医師会でコロナ対策を担当する西野繁樹理事は「これまでのやり方はオミクロン株には通用しない。急速にベッドが埋まり、確実に医療崩壊が起きる」と強い危機感を示す。
これまでオミクロン株の感染者は県の指定病院の専用病床で対応してきた。西野さんは「軽症の人は自宅療養に回ってもらうなど、これまでとは異なるトリアージ(優先順位の選別)が必要だ。基礎疾患がある人や高齢者など、本当に入院が必要な人のベッドを確保しなければ」と話す。
医療従事者が医療現場で感染するリスクに加え、生活の中で感染する可能性も高まっている。沖縄ではすでに多数の医療従事者が感染し、現場への影響が懸念されている。広島市立舟入市民病院の髙蓋(たかふた)寿朗院長は「気をつけていても感染が今までより起こりやすいので、(医療従事者が)休まざるを得ない場合が出てくる」と指摘する。
広島県内では7日、多くの公立学校が授業を再開した。広島市などでは、教室をオンラインでつないだ全校集会も行われた。今後の感染状況により、休校も検討するとしている。
広島市など少なくとも13市町が8日からの3連休に予定していた成人式の延期を決めた。(宮城奈々、松尾葉奈、福冨旅史)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル