「もののけ姫」たたら場のモデル 11年がかりで修復、操業時の姿に

榊原織和

 たたら製鉄が行われた建物が全国で唯一残る島根県雲南市吉田町の「菅谷(すがや)たたら山内(さんない)」。2012年から行われてきた建物などの保存修復事業が先月で終わり、操業当時の姿に生まれ変わった。

 菅谷たたら山内は江戸時代の1792年、鉄師の田部家が創業した、たたら経営の集落。ジブリのアニメ映画もののけ姫」が制作される際、スタッフが調査に訪れ、作品に登場するたたら場のモデルになったという。

 1923(大正12)年に廃業したが、日中戦争中の1939年には軍刀にするためにふたたび鋼を作った。炉が据えられていた高さ約8メートル、324平方メートルの建物「高殿」は、操業当時の姿で全国で唯一現存。1967年に国の重要有形民俗文化財に指定された。

 保存修復事業では、経年劣化が激しかった高殿は全解体修復され、屋根の柱を取り換えたり、土壁を塗り替えたりした。また、古い写真を基に、熱や煙を出す火宇内(ほうち)という屋根の開口部を当時の形に復元した。

 昨年度に修復が完了した「三軒長屋」は、製鉄従事者の住居。たたら廃業後にトタンにふき替えられていた屋根は、当時の栗の板のこけらぶきに戻った。

 他に山内を管理する事務所だった「元小屋」、製鉄の神の金屋子神(かなやごしん)をまつる金屋子社なども修復。総事業費は計約8億円で、国、県、市が負担した。

 市の角田徳幸文化財課長は「たたら独特の構造の建物をぜひ見てもらいたい」。菅谷たたら山内の開館時間は午前9時~午後5時(入館は午後4時まで)。月曜休館。大人310円。問い合わせは鉄の歴史村地域振興事業団(0854・74・0311)へ。(榊原織和)

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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