安倍晋三元首相が参院選の遊説中に銃撃され死亡した事件は、民主主義を揺るがす凶行だ。ノンフィクション作家の保阪正康さん(82)は今後の「暴力の連鎖」を強く懸念する。
「かつて政治家への暴力が歴史を変えてしまった」と保阪さんはいう。念頭にあるのは、政治家が狙われるテロが相次いだ昭和初期。1932(昭和7)年には、政党政治に不満を持つ海軍青年将校によって犬養毅首相が射殺される5・15事件が起きた。
事件が続いた背景に「テロを義挙とたたえる風潮があった」。実際、5・15事件の公判では被告の減刑を求める嘆願書が多く寄せられた。その後、36(昭和11)年の2・26事件を経て、政治家も言論機関も軍部に反対意見を言うことができなくなっていく。「言論の死」の先に待っていたのが、ファシズムと無謀な戦争だったと保阪さんは指摘する。
暴力の連鎖を止めることができるのは「わたしたち一人ひとりの自覚」だという。
「行動を英雄視した人たちも」 保阪正康さんに聞く
――昭和初期はどんな時代だ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル