「クソどうでもいい仕事」なぜ増える やりがい搾取、のりこえるには

 たくさんの人が新しい仕事を始める季節。業務に意味を見いだせない、労働条件がひどい、職場の空気が悪い……と、仕事の悩みも増えるころだ。「クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか」という、ぶっ飛んだ副題の本を書いた大学教授に会ってきた。

 「ブルシットジョブ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。日本語でいうと、「クソどうでもいい仕事」。

 定義はこうだ。

 「本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でさえある有償の雇用」

なのに、地位も報酬も高い

 米国の人類学者デビッド・グレーバーが著書「ブルシット・ジョブ」で論じ、世界で話題になった。一昨年、この本を翻訳したのが大阪公立大の酒井隆史教授だ。

 さかい・たかし 1965年生まれ。専門は社会思想。昨年末「ブルシット・ジョブの謎」(講談社現代新書)を出版。大阪・新世界周辺の都市史を描いた大著「通天閣 新・日本資本主義発達史」(2011年)でサントリー学芸賞を受賞。

 出版元の岩波書店によると、発行は10刷4万部まで伸び、人文系の学術書としては異例の売れ行きだという。

 ブルシットジョブの多くは大きな組織の中にあって、地位も報酬も高い。グレーバーはそれを五つに分類した。

 ①取り巻き――誰かを偉そうにみせるためだけの仕事

 ②脅し屋――脅したり欺いたりして他人を操ろうとする仕事

 ③尻ぬぐい――組織の欠陥をとりつくろうためだけの仕事

 ④書類穴埋め人――形式的な意味しかない書類をつくる仕事

 ⑤タスクマスター――他人に仕事を割り振るだけの不要な上司

 こんな仕事は自分の職場には全くない、と言える人がどれくらいいるだろう。

 翻訳後、酒井さんのもとにもラジオや市民講座への出演依頼、メディアの取材など反響が相次ぎ、解説書「ブルシット・ジョブの謎」の出版にまでつながった。

 「これまで誰も論じなかった『無意味な仕事をする苦しみ』を言い当ててくれた、というカタルシスが、日本でも共鳴を起こしたのでしょう」

この本は「心の叫び」

 それにしても、グローバル化で競争が激しくなり、効率化が求められる現代、なぜブルシットジョブがはびこるのだろう。

社会のあちこちに「競争」を持ち込むネオリベラリズムに原因がある、と酒井さんは言います。どういうことなのでしょう。コロナ禍で注目された「エッセンシャルワーク」の賃金の低さにも、論は広がります。

 背景には「ネオリベラリズム…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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