拡大する変異株感染で祖母を亡くし、自らも感染した男性(44)。入院中、日々の体温などをノートに細かく記録していた。「看病してくれた医療従事者には感謝しかない」
感染力が強いとされる新型コロナウイルスの変異株が広がり、家庭内の感染が深刻になっている。兵庫県内の男性(44)の周辺では、家族ら4世代8人が感染した。男性は「コロナを甘く見ていた」と悔やむ。
90代の祖母が通っていたデイケア施設から電話があったのは3月12日だった。「職員の感染が判明したので、PCR検査を受けて下さい」。祖母は男性の70代の父、60代の母と3人暮らし。検査の結果、祖母は陽性、両親は陰性だった。
最初に感染がわかった祖母の死 「お迎えが…」
祖母はせきをする程度だったが、感染判明から4日後に病院で亡くなった。突然の身内の死に、男性は「お迎えが来たのだ」と受け止めるしかなかった。
祖母の感染が分かった後も、男性と両親は共に営む工場で働き続けていた。休めば収入が途絶えるだけでなく、20年以上にわたって築いてきたものが崩れ落ちそうな気がしたからだ。
妻は不安がった。自宅の手すりを触るたびに消毒するほど気を使っていた。家に帰らず工場に泊まってほしいと言ったが、男性は気に留めなかった。「病気も入院もしたことのない自分が感染するわけがない」と思っていた。
祖母の火葬は感染予防を理由に営業時間外に行われ、人数制限で立ち会うこともできなかった。翌日、遺骨に手を合わせるため実家を訪ねたが、父から「うつるかもしれないから」と促され、10分ほどで後にした。
元気をなくした父 「気疲れ」と思ったら…
父は元気がなかった。「気疲れしたのだろう」。そう思っていたが、祖母が亡くなって6日後、高熱で動けなくなりコロナ病棟に入院した。
急速に広がる家族らへの感染
最初に感染がわかった祖母が亡くなってからまもなく、家族や親族が次々に体調を崩し始めた。感染と闘病生活を経験した男性と妻が、その経験の中から語る悔いや教訓、とるべき備えとは―
同じ日、男性も胸に違和感を覚えた。翌日には妻も発熱。すぐに保健所に連絡して検査を受けると、男性と妻、母の3人が陽性だった。
妻と母は入院したが、男性は…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル