日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告(66)の巨額の役員報酬を開示しなかったとされる事件では、会社としての日産も起訴され、裁判に臨んでいる。キーパーソンは、不正への加担を証言し続ける自社の元秘書室長。日産の弁護人は尋ねた。「ゴーンに意見を言えるような頼りになる役員は誰一人いなかったんですか」――。
この事件で起訴されたのは、ゴーン元会長、「側近」の元代表取締役グレッグ・ケリー被告(64)、日産の三者。元会長が海外逃亡を続ける中、裁判はケリー元役員と日産の罪についてのみ進んでいる。ケリー元役員は無罪を主張して全面的に争っているが、社内調査結果を検察に提出し、一貫して捜査に協力してきた日産は起訴内容を認めている立場だ。
裁判の最大のキーパーソンは、ゴーン元会長ら逮捕の18日前に検察と司法取引し、不起訴と引き換えに捜査に協力した大沼敏明・元秘書室長(61)だ。9月末にスタートした大沼氏の証人尋問は、検察側が11回、ケリー元役員側が9回行ったあと、9日には日産側の順番となり自社の社員に法廷で尋問する構図となった。
大沼氏は当時の心境について、「不正に関わっていることに引っかかりがあった」と吐露した。これに対して日産側は「当時の取締役や監査役に相談することは考えなかったのか」と質問。大沼氏は「相談しても何か動いてくれるとは期待していなかった。取締役や監査役がゴーンさんに(ものを)言える雰囲気ではなかったと思う」と答えた。
日産側は「ゴーンに意見を言えるような頼りになる役員は誰一人いなかったのか」とさらに問うた。大沼氏は「会社の普通の業務なら意見は言えると思うが、報酬について言える人はいなかったのではないか」「ゴーンさんは人事権や報酬を決める権限を持っていた。意図にそぐわないことを言いにくい雰囲気はあった」と振り返った。
日産側は「会社は捜査機関に通…
2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル