キャバクラで「ツケ払い」を申し出て、店に了承されたと思い込んだ疑いがある――。無銭飲食をしたとして詐欺罪に問われた無職男性(69)について、東京高裁は5日、そう判断して男性を無罪とした一審・新潟地裁判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。
判決によると、男性は2021年9月、新潟市内のキャバクラで焼酎の水割りを飲むなどした。だが金がなくて支払いができず、駆けつけた警察官にサービス代を含めた代金計約2万円をだまし取ったとして現行犯逮捕された。所持金はほぼゼロで、預金残高も11円だったという。
男性は当初から「入店時にツケ払いを申し出た。特に返事がなく案内されたため、了承されたと考えた」と説明。一方、応対した店長は公判で「申し出は受けていない。初めて利用する客にツケ払いを許すことも一切ない」と証言した。
22年3月の地裁判決は、店長の証言を踏まえても、当日は店が混雑し、ホール担当者も少なく、店長がインカムをつけていたことなどから「男性の申し出を聞き逃した可能性が否定できない」と判断。詐欺の故意が認められないとした。
高裁も、店長は入店客の案内や注文、酒類の提供などを1人でこなしていた、と指摘。「聞き逃した可能性が『常識的に考えてあり得ない』とは言えない」と述べ、一審判決が不合理とは言えないとした。
検察側は、控訴審で改めて店長を証人として尋問することを求め、高裁も認めたが、本人が出廷しなかった。代わりにバックヤードにいた別の店員の尋問が行われたが、判決は「『店長が申し出を聞き逃すとは考えられない』という心証を抱かせる供述はなかった」とした。(田中恭太)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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