28年ぶりに交代する知事の座を狙って保守が三つに分裂する激しい選挙となった石川県知事選では、候補者擁立をめぐり、自民党内では中央政界も巻き込んだ激しいせめぎ合いがあった。一本化を調整するはずだった場で政治家が発したある一言が、分裂を決定づけた。
報道陣を閉め出し、分裂回避のはずだったが
昨年12月9日、東京・永田町の参院議員会館の一室。報道陣をシャットアウトし、石川県選出の自民国会議員らが、共に知事選に立候補表明した馳浩・前衆院議員(60)=当時=と、山田修路・参院議員(67)=同=を交えて会合を開いた。
両氏は、自民の最大派閥の「安倍派」に所属していた。派閥のトップである安倍晋三元首相は、いち早く昨年7月に立候補表明した馳氏側に立ち、山田氏に知事選に出ないよう求めた経緯があった。しかし、山田氏は聞き入れず、現職で7期務める谷本正憲知事が今期限りでの引退を明らかにした後の12月3日、立候補表明した。
「前代未聞だ」
「派閥の調整力不足が露呈した」
同一派閥から2人の候補者が出る事態に、自民県連内では動揺や不満が広がった。
参院議員会館での会合は、分裂回避のために、県選出の国会議員らが調整に乗り出した結果だった。
いきなりの厳しい追及 山田氏の言い分とは
複数の出席議員によると、当初は2人に知事選への思いを聞き取る予定だったが、山田氏が突然、馳氏の立候補表明のあり方について厳しく追及し始めたという。
山田氏の主張はこうだ。
2021年春から県連内では山田氏が中心となり、知事選候補者を選定するため、国会議員団が内密に県出身の国家公務員らに面接していた。馳氏はそのことを知りながら、その年の7月に突然立候補を表明する「裏切り」を行った……。
問い詰められた馳氏は、「(当時)県連会長でありながら反省している」と言って頭を下げたという。
しかし、怒りが収まらない山田氏は批判を続けたという。
開始から40分経過。
しびれを切らした出席議員の一人が、間を取り持とうとした。
「過去のことはいいから、今後のことについて議論しましょうよ」
ところがその瞬間、山田氏の…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル