被爆地・長崎から核兵器廃絶を訴える「正月座り込み」が1日、長崎市の平和公園であり、被爆者ら約60人が集まった。20回目となる今年は核兵器禁止条約の発効を22日に控え、条約に背を向ける日本政府に改めて参加を求め、米国が原爆を落とした午前11時2分に黙禱(もくとう)した。新型コロナウイルス感染防止にも気を配り、参加者は開始前に検温し、マスク姿で平和祈念像前に座った。(佐々木亮)
元日。平和祈念像の前に集まった人の中に、長崎県立諫早商業高校2年生の中本大貴(たいき)さん(16)の姿があった。5年前、体験を語ってくれた被爆者と交わした「バトンタッチの握手」を胸に、核兵器廃絶を訴える輪に加わった。
中本さんは小学6年生のとき、爆心地から約4・3キロで被爆し、1997年から語り部を続けている長崎市の山川剛さん(84)の被爆講話を聞いた。山川さんから、爆心地付近では防空壕(ごう)の中まで熱線と爆風が吹き込んだため壕の向きが生死を分けたと聞き、その威力の大きさを感じた。
お礼のあいさつをすると、山川さんに手をとられ、こう言われた。「これはただの握手じゃない。バトンタッチだよ」。その言葉が心に残った。
2人の写真が載った当時の学校通信を、中本さんは今も大切にしている。昨夏、長崎市の繁華街などで核兵器の廃絶をめざす署名を集める「高校生1万人署名」に加わった。
新型コロナウイルスの影響で街頭に立てない日が続くが、核兵器禁止条約の発効に向けて自分たちの思いを発信しようと、仲間の高校生たちと話し合いを重ねている。「条約の発効は、地道な努力が世界を変えることができるという意味だと思う。関心をもってもらえるよう、できることをしたい」と中本さんは話す。
この日の座り込みには、山川さんも参加した。中本さんが「握手を今でも覚えています」と言うと、山川さんは「たくさんの人に話していると、いいことがあるね。話すというのは大事だね」と目尻を下げ、再び中本さんの手をとった。(榎本瑞希)
「いよいよ『核兵器廃絶元年』が始まる」
正月座り込みの参加者は順番にマイクを握り、核兵器廃絶や平和への思いを語った。
長崎県平和運動センター被爆者…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル