年が明け、いよいよ受験シーズンを迎えました。各界で活躍する受験経験者や、さまざまな分野で学びを深めている現役大学生・大学院生たちからの、受験生へのメッセージを随時お届けします。
昨年11月末、虎ノ門ヒルズにある米国発のシェアオフィス「CIC Tokyo」の開業イベントに、東京大学教養学部2年の所壮琉(ところたける)さん(20)がいた。暗い部屋で4台のプロジェクターが動く。音に反応して揺れる炎や、アニメの女の子が目の前に現れた。「VR(仮想現実)=(イコール)ゴーグルと思われがちだけど、表現はもっと広い」
180センチの長身に黒いパーカ姿。左胸のロゴ、VRサークル「UT―virtual」の中心メンバーだ。他大生も含め約70人が在籍する。コロナ禍で学内の活動が難しくなったが、取引企業の縁のおかげで、都心の夜景が見わたせるこの一角を間借りできた。週1回のオンライン定例会が中心だが、この日は久々の展示活動だった。
所さんは昨年9月、コンピューターグラフィックス(CG)で安田講堂や赤門などを忠実に再現した「バーチャル東大」を作った。コロナ下でもVR見学できるオープンキャンパスは独創性が話題になった。サークルの代表、東大工学部3年の中川雅人さん(21)は「物事を前に進める力があって頼りになる存在」と一目を置く。
出身は福岡の名門、県立修猷館高校。「うちは母子家庭で裕福でもなかったし、小中高すべて公立です」と明かす。当初は北大志望だったが、東大進学クラスにいるうちに模試の成績が伸びた。周囲のレベルの高い仲間にも刺激され、自然と目標が東大になったという。
CGに興味をもつきっかけはゲームだった。小学4年の年末に買ってもらったPS3の「ファイナルファンタジー13」。リアルで流麗な映像美。現実には存在しないのに、夢が膨らむ未来的なデザインの建物に目を奪われた。
3年からは工学部建築学科に進む。「サークルで学んだVRの知識は、建築とも共通点が多くて面白い」と話す。重要なのは肩書や大学名じゃない。受験生にはそう伝えたいという。「東大というハコにいるだけじゃ意味がない。ここでは好きなことで結びつく仲間と出会えた。自分を高めるリアルのつながりが一番大事だと思う」(西村悠輔)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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