「ファクトチェック」都合よい解釈も… アジア事例に見る「定義の違い」(J-CASTニュース)

 「フェイクニュース」という言葉が一般的に知られるようになるにつれて、政治家の発言やニュース報道の内容について事実関係を検証する「ファクトチェック」という言葉の知名度も上がってきた。

 2019年10月19日に都内で開かれたファクトチェックに関する研究会では、香港大学ジャーナリズム・メディア研究センター准教授の鍛治本正人氏がアジアのファクトチェック事情について講演。アジアでは、政府にとって都合が悪いことに反論する際にも「ファクトチェック」という言葉が用いられるケースがあるとして、「どういう定義で、何をもってファクトチェックと言っているのか、正直、聞いてみないと分からないという状況がある」などと指摘した。

■現地では「誰も信用しない」香港警察の「ファクトチェック」

 鍛治本氏は香港でCNNの記者として活動した後、現地の大学でジャーナリズムやメディアリテラシーを教えている。鍛治本氏が「ファクトチェック」の一例として挙げたのが、香港のデモをめぐり拡散された動画だ。動画では、デモの影響で閉鎖された地下鉄駅の構内に、マスクをつけた私服の人物が歩いている様子が収められており、「デモ隊を装った私服警官」がいるとして騒ぎが広がった。

 これに対して、香港警察が出した声明では、「ファクトチェック」の結果として

  「以前から言っているが、我々は私服警官をデモ隊に入れており、地下鉄にも入れているので、そのうちの一人だ」

などと大筋で事実関係を認めたという。

 こういった状況について、鍛治本氏は

  「これはアジアの傾向で、政府、各省庁や警察組織は、みんな『ファクトチェック』という言葉を使う。とにかく自分たちに都合が悪い情報があると、それを否定する段階で『いや、われわれのファクトチェックによれば』という使い方をする。その『ファクトチェック』の意味と、我々が言う『ファクトチェック』の意味は全然違う」

と注意を呼びかけた。最も厳格だと考えられているファクトチェックの定義は、「国際ファクトチェッキングネットワーク(IFCN)」の綱領によるものだ。綱領では、(1)非党派性と公正性(2)情報源の透明性(3)財源・組織の透明性(4)方法論の透明性(5)明確で誠実な訂正、の5つの要件を求めている。香港警察のファクトチェックは、こういった基準からはかけ離れており、現地では「誰も信用しない」状況だ。インドネシアでは、ファクトチェックを行うNGOも活動には政府や警察の許可が必要で、「一方で独立性ジャーナリズムと言いながら、一方で権力にもいい顔をしていないと、活動そのものができないという状況」だ。


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Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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