今月11日の内閣改造で、歴代で初めて外相から横滑りで抜擢(ばってき)された河野太郎防衛相。外相時代は行動力や発信力を見せ、「ポスト安倍」候補に取り沙汰されるまでになったが、防衛相は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古移設など複雑で繊細な問題を扱わなければならない。就任後初となる29日の沖縄県訪問は、新たな試練の始まりにもなった。
■打開できなかった歴代防衛相
「意見の違いはあるが、できる限り知事と顔を合わせ、沖縄の負担軽減と発展のためにしっかり話し合いをしていきたい」
河野氏が29日夕、玉城デニー知事との30分間の会談でこう強調すると、玉城氏は何度もうなずいた。両氏は旧知の間柄。冒頭には県職員から河野氏に就任祝いの花束が贈られ、玉城氏も拍手を送った。河野氏は政府方針への理解を丁寧に求める姿勢に徹し、対話を重んじる姿勢も強調した。
だが、辺野古移設に話が及ぶと、全くの平行線をたどった。現状では沖縄県の基地負担軽減のためには辺野古移設以外の方策が見当たらない。しかし政府と県が対立し、歴代防衛相も事態を打開できなかった。
安倍晋三首相は防衛相起用に際して「辺野古があるからね」と河野氏に話した。首相は河野氏をリーダーに育てるためにも、地元との困難な調整や信頼関係作りを担わせる考えだ。
■毅然とした発言、少ない「雑巾がけ」
河野氏が約2年間の外相時代に訪れた国・地域は77(延べ123)で過去最多。いわゆる徴用工問題などに関しては原理原則論を貫き、歯に衣(きぬ)着せぬ発言は対韓国で毅然(きぜん)とした姿勢を印象付けた。防衛相就任後は全国の自衛隊部隊や災害現場の視察を積極的にこなし、持ち前の行動力は示している。
一方で「雑巾がけ」の経験は少ない。ある国防族議員は「対立する相手に正論を言うだけでは何も進まない」と懸念する。沖縄県訪問では安全運転を心がけた印象で、29日昼過ぎに面会した辺野古周辺地区の住民は「答えにメリハリがある。地域の話をしっかり受け止めていただいた」と評価した。
地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備地選定や、陸上自衛隊の垂直離着陸輸送機オスプレイの佐賀空港配備も地元との折衝が難航している。初当選時から目指していたという首相のいすを狙うには、こうした課題への取り組みが試金石になる。(田中一世)
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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