謎の天体現象「高速電波バースト」を放った際、星が不可思議な動きをしていることを京都大や台湾国立彰化師範大などの研究チームが突き止めた。宇宙遠方から届く強力な電波パルスのメカニズムの解明につながる可能性がある。
論文が15日、英科学誌ネイチャー(https://doi.org/10.1038/s41586-023-07012-5)に発表される。
高速電波バーストは、1千分の1秒ほどの間に起きる電波フラッシュのこと。遠方銀河から届くが、一瞬だけ光ってすぐ消えるため観測が難しく、発見が初報告されたのは2007年。全天で1日1千回以上起きているとされるが、正体やメカニズムは謎に包まれている。
回転が急に変化、高速電波バーストのきっかけか
京大の榎戸輝揚准教授(宇宙物理学)らは2022年10月、約2万光年先にある中性子星の一種「マグネター」に注目。マグネターは、強力な磁場を放つ「宇宙最強の磁石天体」と言われ、数日前から活動が活発になっていた。
X線望遠鏡と天文衛星で集中観測を始めたころ、2日後に高速電波バーストが発生。その前後の星の変化がX線解析で判明した。
マグネターはまず、回転(自転)が急に速くなった。その後、回転が遅くなりながら高速電波バーストを放出。そしてまた回転が速まり、元の自転の速さに戻った。
その間は9時間。マグネターの中心部からのエネルギーが表面に伝わり、宇宙へ放出された様子を捉えたとみられる。計算によると、太陽が5年で放つエネルギーを短時間に放出していた。
榎戸さんは「膨大なエネルギーを放出するマグネターの『地獄の釜』が開くような貴重なタイミングを垣間見た」と話す。最初の自転の変化が、高速電波バーストを引き起こすきっかけになった可能性が高いとみている。
■初めての「スクープ」 なぜ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル