「マナー化粧」からの卒業 気持ちアゲるため、自由に

化粧って何のため? コロナ禍で在宅勤務やマスク生活が続くなか、化粧に対する意識の変化が見えてきました。やめた人、逆に始めた人…。それぞれの思いを紹介します。

 桜の柄が気に入って買った口紅は、もう1年近く箱にしまったままだ。

 都内に住むメーカー勤務の女性(51)は年の瀬が迫った朝、自宅の洗面所で歯を磨きながら、化粧品が並ぶ一角に目をやった。出勤の時間が迫る。支度を急ぎ終え、スニーカーで家を出た。

 短大を卒業し、一般事務職で就職したのは1991年。「定年まで働きたい」と話すと同僚に笑われ、寿退職した先輩には「いつまで働くの」と聞かれた。

 配属された人事部で、男性が3年で昇進するのに、女性は5年以上かかると知った。同期の女性は10年で半数になった。

 入社した時、化粧はマナーと教えられた。すっぴんで行くと、先輩に指摘された。「会社で必要とされるには完璧でいないと」。年を重ねるほど、化粧に手が抜けなくなった。

 海外拠点とのやりとりを任せられるなど仕事の幅が広がり、やりがいを感じていた。ただ、2年前。朝、洗面所に立つと気分が悪くなり、吐き気がした。ファンデーションを重ねたほおを涙がつたった。

 当時所属していた20人ほどの部署はほとんど男性で、等級は女性が一番下。会議で発言してもほとんど意見が通らない。飲み会の準備など雑用も多く回ってきた。隙があればまた何か言われる。メイクは自分を守るよろいのようだった。

化粧をやめて、夫に言われた言葉

 昨年2月、新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務になった。オンラインの会議が週1度あったが、思い切ってメイクをやめた。

拡大するコロナ禍を機に化粧をやめた女性。やめてはじめて、どれだけ化粧が苦しかったか分かったという=2020年12月6日、東京都内、山本知佳撮影

 会議で発言しても、反応がないまま次の議題に移ることもあったが、毎朝の吐き気がいつの間にか消えていた。急な雑用も減り、定時で仕事が片付くように。できた時間で、数年前から続ける英語の勉強を進めた。退職した後輩にメールで近況を伝えると、「頑張っていますね」と返ってきた。

〈この記事に寄せられた感想から〉
「美容は自由なものだと信じています。けれど、記事にある通り、だれかに見られることが前提だと、たのしいはずの美容に傷つけられることが本当にたくさんあります。時代が追いついてきたことも、コロナという想定外の危機も、自分自身を大切にするよいきっかけになったのでは、と感じています」

 夫との夕食での話題には、近所…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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