岩手県を代表する夏祭り「盛岡さんさ踊り」のPRを担う「ミスさんさ踊り」。その募集要項で、性別や年齢などに制限があるのはジェンダー平等ではないとして、市民団体が26日、内舘茂・盛岡市長宛てに改善を求める要望書を出した。
ミスさんさは毎年5人選ばれ、パレードの先頭で踊るほか、年間を通じて県内外で宣伝に従事する。その募集要項には、盛岡市内か近隣に住む18歳から28歳までの独身女性(高校生不可)で、家族や所属先(職場・学校など)から承諾書が得られることなどが条件とある。ミスさんさと共に祭りを盛り上げる、ミス太鼓やミス横笛、うたっこ娘にも年齢制限や独身の条件がある。
「さんさへの情熱がある人全てが応募できるようにしてほしい」。そう語るのは、市民団体「かだって!さんさをひろげるプロジェクト」代表の佐藤真子さん(26)。「成人女性が活動するのになぜ許諾が必要なのか。承諾書についても再考すべきでは」とも問題提起する。
佐藤さんが代表を務める別の市民団体は、昨年の盛岡市長選や市議選で、候補者にジェンダー平等についてアンケートを実施。ミスさんさのあり方も質問をしたところ市民から反響があったという。その後、関心のある市民ら14人が集まり話し合い、市に要望書を提出することになった。
メンバーの一人で、盛岡市の玉木春香さん(27)は、「小学生の頃からさんさ踊りに参加し、ミスさんさに憧れた時期もあった。でも25歳で結婚して、自分が対象外になったと知り、悲しかった」。1997年にミスさんさを務めて、妹や2人の娘もミスさんさだった盛岡市の小川佐和さん(49)は、「より多様な人たちで、さんさ踊りを盛り上げられるよう見直す時期だと思う」と話す。
近年、祭りや観光のPRを担う人材を募集する際、性別や年齢の制限を撤廃する動きが広がる。愛知県一宮市の一宮七夕まつりでは2022年度に「ミス七夕・ミス織物」が廃止され、学生サポーターが導入された。山形市の「山形花笠まつり」では、今年から女性に限定せずに「ミス花笠」を公募する。
要望書を提出した一人で、ジェンダー問題に詳しい岩手大准教授の古橋綾(あや)さん(39)は「ミス制度を見直すことは、盛岡が多様な人にとってより魅力的に変わるという意思表示になる」と語る。
ミスさんさは、市長が会長を務める「盛岡さんさ踊り実行委員会」が募集・審査する。要望書を受け取った内舘市長は、「すでに委員会の協議の場で、応募資格を見直す必要を提案した」と明かしたうえで、「さんさの歴史を支えてきてくれた皆さんと丁寧に話し合いをして、来年に向けて見直したい」と語った。(伊藤恵里奈)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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