静岡県の川勝平太知事は朝日新聞に対し、リニア中央新幹線静岡工区に関する手記を寄せた。大井川の水量の減少が懸念されて2027年の開業が遅れる可能性が高まっているが、「遅延の責任はJR東海にある」と断じ、ルート変更を「一つの解決策」とした。またコロナ禍で社会が変化し、計画の評価と見直しを求めている。
手記は8月上旬、朝日新聞記者が知事側から受け取った。「リニア中央新幹線VS水・南アルプス・流域住民」と題し、約4200字。リニアと川勝知事の関わりや、現在の見方を示している。
川勝知事は、国土交通省の国土審議会の委員のほか、JR東海の広報誌「ウェッジ」に20年ほど関わったことを記した。そのころは「ひかりやこだまが多く止まるようになって静岡県に有利」と思い、「当初は大推進論者でした」とふりかえった。
だが、地元の声を聞いたり、環境アセスメントの手続きで知事の意見をまとめたりする過程で、「初めて『水』の重要性を骨身にしみて強く認識した」と考え方に変化が生じたことを説明した。今では「水・南アルプス・地域住民の三者を守ることに専心している」という。
拡大するJR東海から林道の整備状況について説明を受ける川勝平太知事(左)=2020年6月11日午前11時9分、静岡市葵区の南アルプス山中、宮川純一撮影
JR東海に対し、大井川の流量が減らないよう2014年、工事で流れた地下水を全量戻すことを求める知事意見を出したという。ところがJR東海がトンネル湧水(ゆうすい)を全量戻すことを表明したのは18年10月で、「対話の環境が整うのに4年半の歳月を空費した」とJR東海が自ら事業を遅らせたと訴えている。
今年のコロナ禍にもふれ、「東京中心主義が揺らいだ」との見方を示し、リニアによって首都圏に中京圏や阪神圏が結びつく必要性に疑問を投げかけている。
「リニア中央新幹線VS水・南アルプス・流域住民」と題した手記で、川勝知事はコロナ禍を「東京問題」と表現。新型コロナが突きつけた「新しい現実」を踏まえ、六つの論点からリニア計画全体の中間評価・見直しを行うべきだと訴えています。手記の全文は後半に。
ただ、「リニアには反対してい…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル