あの夜、20歳の母親は生まれたばかりの長女の頭を殴り、ベッドごと蹴り飛ばした。すぐそばで1歳の長男も泣き叫んでいた。
「やるせなさを感じ、イライラした」
長女は将来にわたって、歩くことも、話すことも難しい障害を負った。母親を暴力に走らせたものは何だったのか。
8月3日、大阪地裁で開かれた初公判。被告は前面にキャラクターが大きく入ったTシャツ姿で法廷に現れた。
幼さの残る顔立ち。金色に染めた腰までの長い髪は、伸びた根元が5センチほど黒くなっていた。
被告は今年4月19日午後11時~20日午前0時ごろ、大阪市福島区の自宅マンションで、ベビーベッドに仰向けで寝ていた当時生後約20日の長女の頭を平手で殴った上に、ベッドを足で蹴って家具にぶつけ、頭部骨折や脳挫傷などのけがを負わせたとして、傷害の罪に問われた。
長女の今後について、医師は「将来寝たきりになるなど重度の後遺症が残るだろう」と診断。脳の8割がダメージを受けており、運動機能や知的機能に著しく影響が出るとした。
裁判官から、起訴状の内容に間違いがないかと問われると、被告は小さな声で「はい」と答えた。
「相談できる人は」との問いかけに
公判でのやりとりから、事件までの経緯をたどる。
被告は当時、マンションで夫(23)と長男、長女との4人で暮らしていた。
弁護人「子育ては誰がしていましたか」
被告「夫に頼んでもやりたがらず、ほとんど1人でやっていました」
被告は夫から暴力を受けていた。
被告「パチンコで負けてきたときとか、思い通りにいかないとき、頭をグーで殴られたり、足で踏まれたりしていました」
弁護人「夫は長男にも暴力をふるっていましたか」
被告「はい」
弁護人「止めに入ったことは」
被告「止めに入ったりしてたけど、自分も暴行されるのが怖かったです」
弁護人「あなたは、今回以外に子どもに暴力をふるったことはありますか」
被告「ないです」
弁護人「夫は浮気もしていましたね」
被告「はい」
弁護人「育児を1人でしていて、相談できる人はいましたか」
被告「役所と警察には相談していたけど、過去に(自分が)施設に入っていたこともあり、信用できず、一人で抱え込んでいました」
夜中に響く幼子2人の泣き声、起きてこない夫
周囲に頼れる人がいないなか、その日を迎える。
事件当日、被告は家族全員で…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル