今年1月の女子バレーボール全日本高校選手権で、新型コロナウイルスの抗原検査で部員が「陽性」となって欠場した就実(岡山市)が12日、昨夏の高校総体覇者、金蘭会(大阪市)と神戸市で特別試合を行った。大会3連覇がかかった選手権の舞台を踏めなかった後輩のため、就実出身の選手が所属するVリーグクラブが企画し、実現した。
Vリーグ公式戦の前に組まれた特別試合。就実3年の岡田愛菜選手(18)が「前日の練習で『あすは楽しんで終わらせよう』と声をかけ合った」と言う通り、神戸市須磨区のグリーンアリーナ神戸のコートで、選手たちは躍動した。
得点を決めるたび、走り回ったり、ハイタッチをしたりして喜びを表現。コロナ禍で高校生活を過ごした選手たちには初めてとなる「声援」も後押しした。
就実は2021年、22年の選手権を制した強豪。3連覇をめざし、シード校として臨んだ初戦の1月5日、試合前の抗原検査で選手20人のうち、1人が「陽性」と判定された。
大会規定では選手らが1人でも陽性となれば欠場となる。その日の再検査で全員が陰性だったが、出場は認められなかった。
こうした事態に、就実出身の石井優希(31)、万代真奈美(24)、深沢めぐみ(19)の3選手が所属するVリーグ1部女子の久光スプリングスが動いた。対戦相手として金蘭会に呼びかけたところ、同校が応じて実現した。
試合は金蘭会が2セットを連取して勝利。その後、15点先取したら勝利となる特別マッチを行い、就実が17―15で競り勝ち、意地を見せた。
最後の1点は主将だった3年の岩本沙希選手(18)のトスを1年生が決めた。
岩本選手は「選手権では悔しい思いをしたが、チーム全員でやりきることができた。こんなに大きな大会を開いてくれたことへの感謝の気持ちを込め、プレーした。一生の宝物になる1日です」と振り返った。
就実の西畑美希監督(45)は試合後、「いいプレーを見せたいと少し堅くなったかな」と笑いつつ、「一度チームが解散するなか、今できる精いっぱいの力を発揮してくれた」とたたえた。
「3年生は色んなことを我慢、我慢してきた。選手権は残念だったが、あの経験でダメになるような練習はしてきていない。これから困難なことがあっても、乗り越えられる」とエールを送った。(山本亮介)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル