岡田将平、戸田和敬
広島への原爆投下後に「黒い雨」を浴びたと訴えた84人全員を被爆者と認めた広島高裁判決を受け、原告団は15日、広島市と広島県に上告を断念するよう申し入れた。国から被爆者健康手帳の交付事務を託されている市と県は、裁判では被告だが、被爆自治体として国に援護区域の拡大も求めている。松井一実市長らは16日に田村憲久厚生労働相に上告断念を要請する。
対応した河野一二・市原爆被害対策部長は「人道的な視点に立って救済をしていくタイミングだろうと考えている」と述べた。二井秀樹・県被爆者支援課長も「県としては上告したくない。黒い雨を体験して苦しんでいる全ての人の救済につながるように、国に要請していく」と話した。
高裁判決は、援護区域より広い範囲で雨が降ったと認定し、疾病にかかわらず「黒い雨に遭った人は被爆者にあたる」と判断した。申入書では、原告らに速やかに手帳を交付し、すべての黒い雨の被害者を救済するよう求めている。原告の高東征二さん(80)は高齢化を挙げ「(裁判を)延ばされると困る」と訴えた。
日本被団協も談話「判決に従う政治的決断を」
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)はこの日、高裁判決を歓迎する談話を発表。「『原爆被害を狭く、小さく、軽く』見ることをやめ、原爆被害の実相に応える施策へと変えるべき」だとし、菅義偉首相や田村厚労相に「判決に従う政治的決断」を求めた。(岡田将平、戸田和敬)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル