「男性中心」の防災や復興のままでいいのか。10年前の東日本大震災の後、支援者への聞き取り調査などで被災地のジェンダー格差を研究してきた静岡大学の池田恵子教授は、「誰もが暮らしやすい街への復興には女性の参加が大きく関わっている」と話します。
いけだ・けいこ 1966年生まれ。減災と男女共同参画研修推進センター共同代表。静岡大学教授。防災、災害対応、復興をジェンダーの視点から研究している。地域防災にジェンダーや多様性の視点を組み込む研修や調査にも取り組んでいる。
10年前、津波で大きな被害を受けた宮城県南三陸町から隣の登米市に避難した女性が、避難所で登米市の女性グループにこんな話をしました。「実はこちらに来てから3週間、下着を取りかえていない」。私は後に支援者への聞き取り調査で知ったのですが、驚きました。
「わがままだと思われる」
ほかにも着替えの場所がない、ブラジャーがないといった声が上がりました。その後、登米市の女性グループは市や企業の協力を得て、一人ひとりに合う下着や基礎化粧品をセットにして届けました。下着の件は尿路感染症などにつながりうる大変なことなのに、言い出せなかった。「わがままだと思われ、避難所にいられなくなる」と思ったんですね。
多くの場合、避難所のリーダーは退職後の世代の男性。地域組織のリーダーです。リーダーが怖いわけではなく、一生懸命やってくれるからこそ言い出せないわけです。行政との交渉や支援受け入れの可否などは男性が担う一方、女性は炊き出しや荷物の仕分けといった下働き的な役割になりがちで、女性の声は運営に反映されにくかった。
下着や生理用品など物資が足り…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル