「不要不急の集まり避けて」 新型肺炎対策めぐる厚労相と専門家会議座長の記者会見(要旨)(産経新聞)

 政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が16日に開催した初会合を受け、加藤勝信厚生労働相と専門家会議座長の脇田隆字・国立感染症研究所所長が行った記者会見の主な発言は次の通り。

 【冒頭発言】

 加藤厚労相「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、当初の予定の1時間を超える、大変熱心に議論をいただいた。会議では、特に臨床の現場にいる方々から、患者がどうなっているのかという話があった。国内の発生状況をどう考えていくべきなのか。重症化予防も含めて、今後の戦略のポイントがどこにあるのか。先を見越したフェーズ(局面)ごとの具体的な対応を提示していく必要性がある。医療機関間で症例の共有化を図っていくなど医療現場の対応力を高めていく必要がある。PCR検査(遺伝子診断法)については弾力的な対応を図るべきではないか。また、受診の目安がどうあるべきかについて熱心に議論をいただいた。

 国内の状況については感染経路を特定できない可能性がある症例が複数認められる状況で、患者が増加する局面を想定した対策を今からとっていくことが必要という見解もいただいた。

 受診の目安についてはさまざまな意見をちょうだいしたので、それを踏まえて取りまとめ作業をしている。脇田座長にも相談した上で、早急に公表したいと思う。今日の意見をベースに、現場で働いている医療関係者、保健所をはじめ地方自治体の皆さん、さらには民間企業で対応している方々、わが国が有する(医療)資源とを結集して連携強化を図りながら、国民に安心していただける感染症への対応、万全を期していきたい」

 脇田座長「感染症の専門家、疫学の先生方、臨床を担当している先生方、幅広く参加してもらった。さまざまな視点から新型コロナ感染症について議論した。

 まず、国内での患者を診ている先生方からの報告をうかがった。『感染症の病態にはかなり幅広いものがある』と。軽症で、ほとんど症状がないがウイルスを持っている方から、重症の肺炎を起こすところまで、さまざまな病態を示している患者がいることがわかってきた。実際にはどういった方に診療の重点を置くべきかだが、もちろん肺炎がある方を重点的に診療していくべきだという意見が主にあったと思う。

 現在の国内の発生状況についても議論した。1月以来、国内で発生しているが、当初は中国・武漢由来の患者ということでトレース(追跡)がとれてきていたが、現在、必ずしも中国や武漢との関連がとれない患者の発生が認められている。そういったことを考えると、国内発生の早期の段階であることを共通認識とした。

 今後は国内での感染状況がさらに進行していくことが考えられるので、いかに感染の進展を防ぐことができるかということも議論してきた。これまでのSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)に比べると、無症状あるいは潜伏期の患者から感染がある可能性がある。それでも国民の行動によって感染の進展をかなり抑えることができるという専門家の意見があった。今後、対策を進めていく必要があると考えている。

 現在、無症状の患者も入院している状況だが、今後の医療資源をどう使っていくかについても議論した。まず、患者を見つける方法だが、現在、中国湖北省あるいは浙江省に関連のある症状のある方ということになっているが、重症の肺炎の方に関してもサーベイランス(監視)を行っているので、完治されてきた症例が見つかってきている。今後のサーベイランスとしては、さらに感度を上げていくことも考える必要があると思っている。

 患者がどのような受診行動をするかも重要になってくる。これまでわかってきたことは、軽症で終わってしまう方が多くいるということだ。風邪のような症状が続くことがある。インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の病状の違いも専門家から意見をもらった。

 新型コロナウイルス感染症の特徴は、だるさが続くとか、感冒の症状が長く続くという特徴がある。風邪の症状を感じたら、まずは自宅で療養していただくことが薦められる。その上で、長くそういった症状が続く場合、あるいはさらに強いだるさ、発熱、呼吸器症状が出てくるような場合、受診・相談していただくことが必要だと考えた。

 軽症者についてはなるべく外来を受診するのではなく、相談センターに相談していただくことになるが、今後の診療の重点は肺炎の方をいかにコントロールしていくかになってくる。肺炎の患者をいかに管理するのかという診療のガイドラインを今後、策定していく必要があるし、広く臨床の先生にどのような臨床的な特徴があるのか知っていただくために、症例集の研究を厚労省で進めることになった。

 さらにPCR検査の能力はかなり国内でも充実してきている。一方で、軽症の患者が検査に殺到するのを避ける必要があると考えている。肺炎の患者を適切に臨床医の先生方が診断して、さらにそういった患者の検査を進めるべきだということになった。

 高齢者あるいは基礎疾患を持っている患者に関しては重症肺炎になる可能性が高いと考えられているので、そういった方々に関しては早めの検査を進めたいという結論だったと思う。

 最後に感染を止めるために国民全員が協力して蔓延(まんえん)を抑えるという行動が必要になってくると考えている。例えば、東京五輪に向けて既に準備されているテレワーク(自宅などでの勤務)の促進とか、時差出勤を行うことで、なるべく人混みを避けるような行動をしていただく、あるいは不要不急な集まりをなるべく自粛するようなことも検討していく必要があろうかということが、この会議で合意されたところだ。

 受診相談の目安に関してはこれからさらにもう少しとりまとめて、皆さんにわかりやすく提示できればと考えている」

【主な質疑応答】

 --今は流行状態ではないのか

 脇田氏「感染の早期であるという、そういう認識だ」

 --受診相談の目安の公表は

 加藤氏「できれば今日(16日)中にとりまとめで、明日(17日)にでも発表できるようにしたい。できる限り一般にわかりやすい形で示したい」

 --国内の現状は流行ではないが市中感染しているという認識か

 加藤氏「今日は、今回の新型(コロナ)ウイルスの特徴などの議論をしていただいた。現場では、これから患者が増えていくのではないだろうかということを感覚として持っておられるという話があった。先ほど、これから増加することが想定されるんで、そういう面に対する対応をしっかりとっていく必要があるという認識をお示しいただいた。

 私自身としても、現在、前回申し上げたように感染経路がいまの段階では見えないものが、いくつかあるわけだから、こうしたことになると違う局面になっている。そして、患者が増加する局面を想定すべきだというご指摘をいただいたので、やはり前広にいろんなことを考えていく。そのときに大事なことは、やはりわれわれと医療現場の先生方と地方自治体の皆さま方と、PCR検査についていえば、いま民間の協力も得ようとしているわけだ。そういうものを、日本の持つ総合力をしっかりと発揮できるよう努めていくことも大事だと思っている」

 --テレワークや時差出勤などの要請について

 加藤氏「前回の(新型)インフルエンザでは、私の記憶では、方針は出されていたが、最終的には実施はしていなかった。ただ、兵庫県と大阪府においては、高校から小学校にかけて一時期、学校閉鎖というんですかね、あった。今回はまだそこまで議論しているわけではない。まさに不要不急のものは避けていただく。あるいは、高齢者や基礎疾患のある方は、人混みをできるだけ避けていただきたいと申し上げていく。

 これまでも、東京五輪・パラリンピックを見据えてテレワークを呼び掛けてきている。時差出勤についても、普段として呼び掛けているわけだが、改めてそれも含めてみなさんに呼び掛けていく必要があると思う」

 --クルーズ船の感染者は355人になった。なぜこれほど患者が増えたのか。現時点でわかっている見解は

 脇田氏「クルーズ船についてそれほど議論したということではない。現在のクルーズ船の感染状況、もうひとつ屋台船関連の感染状況をみると、かなり密集した状況で感染者がいると、非常に感染が広がりやすいのではないかというようなことは推定をしている。なぜクルーズ船でそれほど広がったかということは、さらにデータを詳しく調査する必要がある。まさに現在も調査をしているということなので、そこは現時点であまり推定で申し上げるのは控えたい」

 --3月1日に予定されている東京マラソンは開催できそうか

 加藤氏「今日の議論のなかで大規模集会について自粛を求めるべきだという議論はなかったというふうに承知している」

 --現時点でクルーズ船の対応は間違っていなかったか

 加藤氏「クルーズ船、乗員乗客の型の安全確保を図るということと、既に感染の恐れがあるわけだから国内の感染を阻止する。これを同時並行してやり、同時に私どもの持っている施設などさまざまな面からいって制約もある。3700人という多くの方が乗っていたという事情もある。そういう中で、それぞれの方がベストを尽くして対応していただいていると思う」

 --国民がそれぞれすべきこととは

 脇田座長「まだ感染の早期にあるということで、必ずしも、ただちにということはないが、国民全体で感染の蔓延を防いでいくという認識を共通にする必要があると考えている。人混みを避けるとか。大事なのは、お年寄りへの感染を防ぐということだが、自分が感染しないということが、人に感染させることを防ぐことでもある。難しいのは、無症状、軽症でもウイルスを持っている場合がある。自分が感染した場合に人に感染してしまうかもしれない。広がれば広がるほど、感染者も増える。そういったことで、なるべく自分が感染しない行動をとってもらいたいという趣旨で申し上げた」

 --(診療を受けたり相談したりすべき人の)目安が示されていないのではないか

 脇田氏「国内では必ずしも症例数が多くないので、すべてを網羅しているわけではないが、糖尿病や心不全、透析をされている患者さんなどだ。また、免疫抑制剤や抗がん剤を使っている方。免疫をある程度抑制されている状態にあれば、これは感染が進みやすい、重症化しやすいと考えられるので、特に高齢者で基礎疾患があるかたは注意していただく必要がある」

 --高齢者は何歳以上のことか

 脇田氏「その点も専門家会議では少し議論があった。ただ、重症化をする、重症肺炎になるという目安が、必ずしも何歳以上という区切りができるわけではない。少し留保したい」

 --PCR検査の(対象者の)弾力化は、どう示していくのか

 加藤氏「現在は湖北省、それとの絡みのある、陽性患者と接触したということもあるが、そういう経緯がなくても、現在では大変重篤な肺炎というのが対象になっている。加えて、『それに限定しない』という注意書きがある。さらに、医師の診断を踏まえながら、保健所も弾力的に対応してほしいということを、これまで重ねていろんなことを書いていたので、そこは一度きちんと整理して、肺炎も重症でなくても一般のいわゆる肺炎の現象があれば、その辺も含めて、わかりやすい形で示すことで医療現場の方々が、しっかりPCR検査に回していけるようにしていかないといけない」

 --受診の目安は16日に示してほしいという考えを民放番組で示していた。どういう点で(16日のうちに)まとめるのが難しいのか

 加藤氏「当初考えていたのに加え、最初の期間は自宅で過ごしてもらうとか、その間の受診対応はどうすべきかとか、広範なご意見があった。それを、きちっと書く必要があるという判断で、(16日の)記者会見までにまとめるのは拙速である、ということだ。座長と相談しながら、今日(16日)の意見を反映したものを作って明日(17日)にも示したい」

 --国内症例の共有について。だれが主導し、発信するのか。海外向けは

 脇田氏「いま現在、国内の症例を扱っている病院の先生に症例を持ち寄っていただき、厚労省の症例研究という形でまとめようと。英語での発信もやっていきたい。日本からの英語発信が少ないという指摘もあった」

 --早ければいつごろ

 脇田氏「今週に治療ガイドラインを策定する会議を開催するのでその際に議論したい」

 --エイズの薬が効果があるという報告もある。治療として使うには保険適用の手続きをとる考えはあるか

 加藤氏「既に臨床治験という仕組みでやっている。研究費として支援しているので本人の負担はない。臨床治験ということで手続きにのっとって慎重にやっている。広げていくということであれば迅速に対応しないといけない」

 --不要不急の集まりを自粛することも検討することだが

 脇田氏「もちろん自粛を強制するという話ではない。国民の皆さんにそういう意識を持ってもらいたいということが、専門家会議の参加者の合意だった。例えば、新年会、送別会を行うとか、そういうことが不要不急と言っていいか分かりませんが。今はスカイプや電話会議とか遠隔地でもできるのでそういうものを利用して不要不急な集まりを避けることになるかなと認識している」

 加藤氏「ある意味、人混みを避けてほしいということと同じような意味で使っている」(了)

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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